余命1日の花嫁③(終)

 あいりちゃんが死んで自分は泣いていた。程なくして彼女の父親もやってくる。


「いや、すまないね。娘の面倒を見てくれて」

「いえ、僕は何も出来ませんでした」

 あいりちゃんの体はもう動かなくなってしまった。


「まだこんなに若いのに早く死んでしまうなんて…。こんなのあんまりだろ…」

「熊谷くん…」

 2人でひどく落ち込んでいた。悲しみにくれていた次の瞬間だった。


「なんちゃってー! ドッキリ大成功!」

「………。え?」

「ど、どういうことだ…!?」

 そこには体を動かすあいりちゃんがいた。目玉が飛び出すんじゃないかと思うぐらいに驚いた。


「な、何で生きているのだ!?」

 お父さんの方も目ん玉飛び出すぐらいに驚いていた。お父さんと一緒にやってきた側近みたい人も目ん玉を飛び出すぐらいに驚いていた。


「現代医学では解明されていない病気なのにどうしてだ…!?」

「ふー! 体がかるーい!」

 次の瞬間にはあいりちゃんはベッドの上で 跳び跳ねていた。


「私、もうこんなに元気になったよ!」

 めちゃくちゃピンピンしていた。


「と、とにかく娘が生きていてよかった!」

 お父さんは胸を撫で下ろした。


「あいりちゃん、本当に生きていてよかったよ!」

 僕も泣いていた。


「私はこんなことじゃくたばらないよ!」

 なんか急におてんば娘みたいな感じになってきた。


「でもいったいどうしてだ!?」

 医者も聞く。


「きっとこれは愛の力なのかな」

「え?」

 彼女は急に愛の力が病気を治したと語るのであった。


「私はたけるさんにキスされて目覚めたの」

「熊谷くん、私がいない間にそんなことをしていたのか…」

「す、すいません」

 何か変な空気が流れる。


「そうなんだよね、12時になるまでずっと私のことをキスし続けてくれたよ」

「ちょっと熊谷くん…。娘になんてことを…」

「すいません! お父さん!」

 さらに変な空気が流れる。


「やっぱりどう考えたって私が生きているのはたけるさんの愛の力だと思うの」

「そ、そうか。とにかく生きてて良かったよ。熊谷くんとよくやってくれた」

「そ、そうですか。ハハハ」

 まあとにかく生きていて良かった。


「お父さん」

「なんだい、あいり」

「少したけるさんとお話があるから、2人だけにしてくれる」

「そうだな。熊谷くん、娘との話し合いは頼んだよ」

 そう言うとあいりちゃんのお父さんは病室から出ていった。


「さて、たけるさん」

「はい」

「………。」

「………。」

 今は2人だけの空間だ。時計の針が刻む音と心臓のドクドクした音が聞こえる。


「私、たけるさんのことが大好きです!」

「ほえー!?」

 彼女に抱き締められた。


「私、たけるさんのことは見た瞬間にビビっとくるものがあったの」

「え?」

「たけるさんを見た瞬間に身体に電流が走ったような感覚があったの。その日からは毎日公園に行って遠くからたけるさんのことを見ていたの」

「そ、そうだったんだ」

 次々と好きなった理由を話していくのであった。


「たけるさんが毎日公園のベンチで寝ころびながら本を読んでいるところを見て、自由な人で良いなと思ったの」

「全て見られていたのか、お恥ずかしい」

「本を読み終わったあとに遠くを見る眼差しはどこか知的でミステリアスな感じがしたの。それが本当に素敵で…」

「う、うん」

 とにかく自分はダメなやつだなと改めて思った。


「それよりもたけるさん」

「はい…」

「さっきの約束覚えてますよね?」

「え?」

 いったいなんのことだろうか?


「私のことを死ぬまで一生愛し続けてくれるって事ですよ」

「確かにそんなこと言ったような覚えがあるような…」

「それは死にそうになっていた時だけじゃないですからね。今も継続中ですよ!」

「え?」

「ちゃんと守ってくださいね!」

「で、でも。僕は無職で27歳のおじさんだよ?」

「それでも良いんです! 私はあなたじゃなきゃ嫌です!」

「ほ、本当にいいの?」

 こんな美少女と結婚出来たら幸せだろうなー。


「もう、そんなに私が信じられないんですか? じゃあこうしてやる! えい!」

「うわー!」

 そのまま押し倒されてキスをされたのであった。


「これで信じてくれますよね…」

「う、うん…」

 あいりちゃんはモジモジしながら恥ずかしがっていた。恥じらうあいりちゃんは可愛かった。

 そして自分はあいりちゃんを抱き締め返してまたキスをした。そして、そのまま2人は正式に結婚することになった。



……………………………………



結婚後、自分は無職をやめた。今はあいりちゃんのお父さんの会社を手伝っている。あいりちゃんとは相変わらず仲良くやっている。


「たけるさん!」

「なーに」

「一緒に良い家庭を築いていきましょうね! 子供も野球チームかサッカーチームが作れるくらい作りましょう!」

「ええ?」

 とほほ、こりゃ大変そうだ


「たけるさん、とっても愛してます!」

「僕もだよ、あいりちゃん!」


~おわり~

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