殺人施設からの脱出

「ここはどこだろう?」


 自分は起きると、どこかの事務所みたいなところにいた。自分のいる部屋にはロッカーがたくさん並んでいる。

なぜ自分がここにいるのかは分からない。


「はい大丈夫ですよ~次の方はどうぞこちらへ」


 どこかから誰かの声が聞こえてくる。


「安心してくださいね。3秒で完全に気絶して死ねますから大丈夫ですよ」

「え?」


 とんでもない衝撃的な言葉が聞こえてきた。聞き間違いじゃなければ、今気絶とか死ぬとか言っていたのかな?

 ここは一体どういう場所なのだろうか? ただやばい場所なんだろうなということは分かる。

 自分が眠っていた事務所っぽいところから出て隣の部屋を見てみた。すると大勢の人が無理矢理列に並ばされていたのだった。

 そして列に並んでいる人は何かされて殺されていた。そして死んだ人は次々にどこかへと運ばれていった。

 並んでいる途中では失禁する者や吐く者、泣き叫ぶ者など様々な人がいた。みんな次々と殺されている。

 みんな自分が死ぬってことが分かっているんだからそりゃこうなるよなという感じだ。


「これはやばいよな」


 早く逃げないと自分も殺されてしまう。自分はこの建物から出ることを決意したのだった。

 こんなやばいところにいたら遅かれ早かれ確実に殺されてしまうからだ。今自分は2階の一番端っこの事務所っぽいところにいる。

 ここの建物を出るには多くの人が殺されている部屋の前を通って、中央の階段を通って一階に降りて正面玄関から出なくてははならない。

 だが正面玄関から出るのにはかなりのリスクがある。そこに警備の人間がいない訳がないからだ。

 でもここでずっとモタモタとしていても時間が経って殺されるだけだ。だったら自分はもういっそのことリスク覚悟でここから飛び出してやろうと思った。


「よし、行くか」


 自分は事務所を飛び出した。そして駆け抜けていく。殺される予定の人達が並んでいる2階の部屋の前をを通り抜けて中央階段まで来た。


「うりゃぉ!」


 そして一階まで手すりで滑って降りる。するとビビビビビと警報音が作動した。


「脱走しようとしている者がいるぞ! 探せ!」

 一斉に扉付近の警備の人たちが巡回し出した。これはまずい。だが、正面玄関以外は外に出られる場所はなさそうだ。


「もう俺はダメなのか」


 だが警報がなると階段近くに隠れていた脱走を試みる他の人間が一斉に出てきた。どうやら自分以外の他の人もこの謎の施設から出ていきたいらしい。


「お前ら! 行くぞ!」

「おおおおおお!!!」


 そして皆で一斉に飛び出して出口に向かって走り出す。そうすることで警備の人達が脱走を試みる人間を捕まえるターゲットを分散することができる。

 これで脱出出来る確率が大幅に上がるということだ。そしてみんなで出口に向かって走り出した。

 だが最後に逃げ切れたのは自分一人だった。


「はぁ、逃げ切れたのは俺だけかよ…。クソォ! みんな本当にすまない…」


  そしてこの地獄のような建物から出ることができたのだった。でも悔しさと同時にどこか安心した気持ちもあった。


「やったこれで自由だ」


 自分は外に出ればそこには自由が広がっていると思っていた。でも違った。そこには地獄が広がっていた。

 施設で殺された方がマシだったとかもしれない。施設の外は人が住めるような環境ではなかったのだ。

 あの施設はせめてこの地獄の世界からの解放をしてあげようということであったのかもしれない。

 自分はそれでもこの地獄のような世界で生きていく。安息の地があると信じて。

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