目に見える建物の中でそれぞれの生活がある

「すごいことに気づいちゃったよ」

「なに?」

「今この目に見える建物に全ての人が住んでいるって凄くない?」

「ふむふむ」

 確かにそれはすごいことだ。


「あの家に住んでいる人たちを想像してごらんよ。あの家庭は今修羅場で殴り合いをしているね」

 なんとも物騒なことを言い始めた。


「あっちの家庭は今おっさんがお尻をかきながら、だらしない格好でテレビを見ているよ。あ、今この瞬間におっさんがおならをした」

「なるほど、この家に住んでいる人は気の毒だな。勝手に汚いおっさんだと思われていて」

「こっちの家はね、今床の掃除をしているよね」

「なるほど、どうやって?」

「舌でペロペロと床舐めて掃除をしているよ」

「この家も気の毒に…。絶対舌でペロペロ舐めて床の掃除はしているわけじゃないのにね 」

「こっちの部屋はね、今トイレの便器の中に入って入浴を楽しんでいるよ」

「もう何だかツッコムのもバカらしくなってきたよ」

 絶対そんなことしているわけがないのだから。


「そこの家はね、今家の中で花火をして火災報知器が鳴っているよ」

「いやいやそんなわけないから」

ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ


「いや、本当に火災報知器鳴ってたよ。もしかして今まで入っていたことって全て本当だったのか?」

「当たり前じゃんなんで自分が嘘をつく必要があるんだよ」

「いやきっとこれは何かの気のせいだ。次行こう」

 新しい家を探す。


「えっとね、そこの家は今ハンバーガー 食べてるよ」

「これは普通だな」

「でもハンバーガーの間に黒ゴキブリを挟んでいるよ」

「オエー」

 ちょっと吐きそうになっちゃったよ。


「そこの家の人は今❌❌❌をしているね 」

「なるほどね、❌❌❌をしているのか。これはちょっと教えられないよなぁ」

「そっちの家も今二人で❌❌❌をしているね」

「みんな朝っぱらから元気なんだね。どんだけみんな❌❌❌しているんだよ」

「そこの家は今赤ちゃんが生まれたみたいだね」

「自宅で赤ちゃんを産んだのか何かすごいなあ 」

「あそこの家はカタカタとパソコンをやりながら何か画面に向かって文句を言っているよ」

「それは何かのせいでむかついて頭に血が上っている状態で何かを書き込んでいるんだね」

「そこの家の人は野球ファンぽいよ。そしてライバルチームをめちゃくちゃに叩いているみたいだね」

「まあライバルチームを敵視してしまうのはしょうがないよな。特に推しのチームがライバルチームにケチョンケチョンにされたらかなりむかつくよな」

 友達はこんな感じでみんなの家の生活を覗いていったのだった。それぞれ十人十色の生き方がある。

 100人の人間がいれば、100通りの生き方や生活がそこにはある。


「何ともいい感じに締めくくったね。あ、今画面の前から見ているそこのあなた。❌❌❌をしていますね」

「いやそんなわけないだろうが」


おしまい

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