嫁居1ヶ月
僕には昔から好きだった女の子がいた。その子は幼馴染のさなえちゃんだ。さなえちゃんとは小さい頃から一緒によく遊んでいた。
遠くに行く時もいつも僕たちは一緒だった。僕は割と早い段階から好きになっていて、さなえちゃんの方もなんとなく僕のことが好きだというのは分かっていた。
そうなのだ、かなり早い段階から二人とも両思いだった。けれど僕はなかなかのヘタレなので、どうにも告白する勇気がなかったのだ。
そんなこんなでそのまま大人になってしまった。このままじゃ別の誰かにさなえちゃんを取られちゃうと思った。
そしてこの前デートを一緒にした。もちろんデートは自分から誘ったのだった。
念入りにプランを建てた。まず最初は一緒に映画館を行って、その後にランチをして、最後は丘の公園の上で綺麗な夜景を見ながらそこでプロポーズしたのだ。
「僕と結婚してください」
そしてさなえちゃんは泣き始めた。そしてこう答えた。
「はい」
晴れて僕と結婚してくれることになったのだった。 だがどうやらさなえちゃんは、よめい1ヶ月らしい。
ここで言うよめいとは命のことではなく嫁で居てくれる期間が1カ月ということだ。
この運命はどうやら覆すことができないみたいなのだ。この前僕が寝ている時に神様が僕にお告げをくれた。
「さなえちゃんの嫁居はせいぜい1ヶ月だから、その1ヶ月の結婚生活を楽しんでおくんだよ」
「ちょっと待って!」
そう言い残すと神様が消えていった。もうその夢の内容を鮮明に覚えていて頭から離れられなくなっていたのだ。
僕はこれからどうすればいいのだろうか。さなえちゃんに相談するわけにもいかないし、もうこのままじゃどうしようもないよ。
自分は新婚生活をホヤホヤなのにも関わらず、ずっと落ち込んでいた。それを見た早苗ちゃんも最初は心配してくれていた。
だがあんまりにもその落ち込みが長引きすぎて呆れさせていた。
「もうあなたはなんなのよ! 私と一緒にいるのがそんなにつまらないの?」
「いやそういうわけじゃないんだよ! 早苗ちゃん、僕悩み事があって…。でも教えられないんだ!」
「なんなのよそれ、私たちもう結婚している者同士なのに私に隠し事があるって言うの? もうあなたとはやっていけない」
「そ、そんな! 早苗ちゃん待って!」
「あなたとはもう離婚よ!」
まさに嫁居一か月だった。しかもこの一か月間は特に楽しめることもなかった。あの変な夢を見てから全てが狂ってしまった。
「何が余命1か月だ! 恋愛の神様を一生恨んでやる!」
それから僕は今後の人生結婚することもなく生涯を終えたのだった。やはりさなえちゃんを超える女の子がいなかったために結婚出来なかった。
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