人を食べる木

 いつもは普通の木なのだが、お腹空くと途端に口が開いて何でも食べてしまう木があった。もちろん人間も捕食対象だ。

 ある時、森の中でキノコを取っている人がいた。


「ふぅー今日は大量だぜ!家族にたくさん食わせてやらねぇとな。」

 その男の人は、たいそう働き者だった。家族が寝ている間にこっそり起きて、早朝からキノコを取りに来ていた。


「はぁ…疲れたちょっとだけ一休みするかな。」

 男の人はそういう木に寄りかかって腰を落とした。座りながらゆっくりと体を休めた。

 そうしているうちにだんだんウトウトとしてきて男の人をそのまま寝てしまった。


クチャ…

 何かが開く音が聞こえた。そうだ、人を食うという噂の木だ。男の人がちょうど寄りかかって休んでいた木が、実はその人食いの木だったのだ。


「ぐがああああ…!」

 男の人はよほど疲れていたのか、木が少し動いてもびくとも起きる気配が無かった。

 アクビをかいて呑気にぐっすり寝ていた。人を食う木は、口の位置が男の人とは反対側にあったので、男の人を起こさないようにゆっくりと体を捻って回転させていく。


「ぐがああああ…!」

 男の人は相変わらず起きない。自分の身に危険が迫っているというのに…。

 そうしてるうちに人を食う木の口が男の正面に来た。


クチャ…

 そして人を食う木が、大きな口を開けて男を食べようとしていた。男は相変わらず寝ている。

 男の人生が終わったなと思ったその時だった! 男は突然目を覚まして間一髪で食われずに済んだ。

 男はショートスリーパーだったので、短い時間で目を覚ましたのだ。


だかしかし、男が朝から早起きして一生懸命集めたキノコは無くなっていた。人を食う木がキノコを全部食べてしまったのだ。

 それに怒った男は近くにあったオノを手に持つと人を食う木をバシバシと叩き切ってしまいました。

 さすがの人を食う木も切られてしまえば、ただの木と化してしまう。そして男は口の中から食べられたキノコを無理矢理取り出しました。


「こんな気味の悪い木は燃やしてやる!」

 男はそういうと人を食う木に火を着けて、ファイアーしました。男はスッキリして一件落着したのかそのまま帰ってしまいました。

 その後、ファイアーした火は他の木にも燃え移り森中が大火災となりました。そうなってしまえば、当然もうキノコは取りになど行けません。


森を失ってしまえば、近くで食料を取れる場所も無いので飢えで死ぬのを待つしかありません。


「みんな、俺のせいですまない…」

 何て言いながら、新しい棲み家を探していたその時だった。近くに燃えてしまった森とは別の燃えていない森がたまたまあったのだ。

 男と家族はたまたま見つけて森でまずは食料を探すことにしました。森の中を歩いていると木の実やらキノコやら食料が豊富にあった。

 男は夢中になって食料を集めていました。


「おーい、こんなにたくさん取れたぞ!」

 振り返ってみると家族は誰1人も居なくなってしまっていたのだ。男は、これはおかしいなと思っていたその時だった。

 森中の木々がザワザワし始めたのです。男は何となく分かってしまった。この森は人を食う木の群れなのだ。


 元々はさっきの森以外に近くに森が無かったのにたまたま森があったのは、木が移動してきたからだ。

 そして家族は自分がキノコや木の実集めに夢中になっている間に全員食べられてしまったのだろう。


 そして周囲の人を食う木達がゆっくりと口を開けた。家族を失った今、生きる意味を見いだせずその場で立ち尽くした。

 そして次は男が食べられる番だ。

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