天ぷらになっても泳ぐ魚

 私はいつも通り店を営業していた。今日は新メニュー開拓のために魚たちを天ぷらにして揚げていた。

 魚を天ぷらで揚げると揚げた時に良い匂いと音がする。


「そろそろ天ぷらも揚げ終わりだぞ!」

 そうして私は天ぷらになった魚たちを油からあげることにした。私はゆっくりと天ぷらになった魚たちを油のプールから引き揚げた。


「うーん、美味しそうだ!」

 見た目も匂いも理想通りの100点だった。これは新しくメニューとして出すのもアリだなと思った。


「ん、なんだ?」

 この時、突然なにか魚の天ぷらに妙な違和感を感じた。私は魚の天ぷらをじっと見てみることにした。


「あれあれあれ…!?」

 天ぷら達が微かにぴくぴくと動いていた。私は何かの見間違いかと思って目を擦って再度、魚の天ぷらを見る。


「えええええ…!?」

 すると魚の天ぷらたちがぴくぴくと動くどころか、勝手に水槽へと移動して行くのだ。


「なんじゃこりゃ…!?」

 私はびっくりして腰を抜かしてしまった 。そして魚の天ぷらたちは、チャポン!っと音を立てて自ら水槽に入っていってしまった。

 そして魚の天ぷらたちは優雅に水槽の中をスイスイと泳ぎ始めたのだ。一体何が起きているのだろうか!?


「こりゃたいへんだぁ~!?」

 天ぷらになっても泳ぎ続ける魚たちは自分が死んでしまったことに気づいていないのだろうか?

 私は色々と考えてみたうえで、店の開店時間も迫っていたこともあり、天ぷら達を自由に水槽の中で泳がせておくことにした。そしていつも通りに店を営業した。


ガラガラッ!

「邪魔するよ」

「いらっしゃい!?」

 気が付いたら店内に客が来ていた。私は焦りながらも客の対応をする。


「すいません、お刺身ください」

「は、はい! お刺身ですね!?」

 客はそう言うとたまたま目に入った水槽を何となく見た。客はじーっと水槽を見る。


「ど、どうしましたかお客さん…。水槽の中に何かいましたか…?」

「えー!? ちょちょ、ちょっと…!? 天ぷらが、水槽の中を泳いでますよ…!? どうなってんだこりゃ…!?」

 客は腰を抜かしてびっくりしていた。尋常じゃないほどにびっくりした顔をしていた。


「あはは、バレちゃいましたか…。みんなには内緒ですよ…」

「あわわわわわわわわわ!?」

 その後、客に水槽の中で泳ぐ天ぷらを発見されて、それが一気にSNSで拡散されてしまったのだった。

 そして今では天ぷらの泳ぐ店として有名になったのだった。

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