第14話 終わりの始まり
「漆黒海」を指揮していたのは、俺が小学生の頃にぶちのめしたバトリスト〜
鋏目 遊禅(はさめ ゆうぜん)だった。
俺たちは捕縛した彼を部屋から連れ出そうとしていた。
「よし、行くぞ」
オルカマンが彼の縄を引っ張る。
「ぐっ…色々と納得がいかない…」
悔しそうな顔をしながら立ち上がる友禅。
「僕が黒幕だとなぜ分かった?」
「ベルガと戦闘した時に違和感を感じたのさ。
やつを『地割れ』で破壊した時、何故かその場に止まっていた。普通ならありえない話だ。カード効果による干渉が無ければの話だがな。」
「バトマには相手ターンにも効果を発動できるカードがごまんとある。破壊から守ったり、一時的に離脱させたり、無効にしたりと色々できるだろうな。」
「つまり、影で補助してるバトリストがいると睨んだのさ。」
「…その通りだ。僕がベルガの補助をしていた。」
「流石にお前だったとは予想外だったけどな。しかし不思議だ。オルカマンの元仲間の偽物まで使うとはね。どこで調べてきた?」
「それは秘密だ。」
「言って欲しい。あんただけでやったんならそれでいいが、関係者がいるなら話は別だ。」
「…」
友禅は黙秘を続けるようだ。
「俺はどうやってあんたが来たか知りたいんだ。推測の域だが、何か悪いものに導かれたんだろ?このままじゃ俺に復讐する前に破滅するぜ。
もう一度言う。話して欲しいんだ。」
俺は友禅の目をまっすぐ見て強く訴えた。
ボソッ
友禅の口が開いたその瞬間…
//あなたが語る必要はありませんよ!\\
ズオオオオ!
不気味な声と共に部屋は漆黒に包まれた。
パチッ
目を開けるとそこに天と地は無く、ただ闇が広がっていた。
//初めまして。私、邪神ターミナルと申します。以後お見知りおきを。//
銀色の燕尾服の男が宙に現れる俺達に向け一礼した。初めましてと言われたが、その顔に見覚えがあった。
…そう転生前、俺を謀殺したあっくんに瓜二つだったのだ。
「なんなの?こわい…」
突然の事にルルカは怯えている。
「落ち着いて!きっと大丈夫だから!」
「私がいる。少女よ、心を強く持て。」
そんな彼女を2人は励ましていた。
「あんたが、友禅にこんな事をさせたんだな。」
俺は邪神に問いかけた。
//「違いますね。彼の背中を少し押してあげただけですよ。「この世界に散らばった、『ゴット9』を回収出来れば力を分け与えましょう」とね。結果はこの通り散々な者でしたが…\\
邪神が友禅に手を伸ばす。
ズモモモモ
「うわあわっ!」
闇の触手に飲まれる友禅。
//あなたはもう用済みです。処分いたします。\\
「キルザーク!インフィニットラッシュだ!」
「⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️!」
考えより先に声が出た。友禅を助けたい。何故なら、一度戦った戦友だから。彼と普通のバトマでもう一度戦いたいのだ。
ザシュ!
相棒の一撃が触手を引き裂く。
友禅はもう片方の手に抱えられ無事だ。どうやら気を失ってしまったようだが。
//意外とやりますね。ですが\\
ズモモモモ
「⬛️⬛️⬛️…」
今度はキルザークが触手に飲まれた。あまりも一瞬だった。
//私には何一つ届きませんね\\
ギュオオオ!
キルザークは闇の粒となって吸収されてしまった。
//見て頂きましたか?これが私の権能。
禁止制限(リミットレギュレーション)でございます。\\
「ふざけんな!がぁぁ!」
怒りが身体の奥底から込み上がる。俺は邪神に飛びかかった。そんな俺に触手が襲いかかった。
バァァァン
気がついた時俺は地面に転がっていた。
どうやらかすり傷で済んだようだ。
顔を上げると…オルカマンがうずくまるように倒れていた。
俺を押し除け、攻撃から身を守ってくれたのだ。
「助けられて…良かった…」
「オルカマン…どうして」
震えて手に力が入らない。
//いいものを観させて頂きました。褒賞を与えましょう。\\
パァァァン、パァァァン
鞭のようにしなる触手が俺達に襲いかかる。
「きゃぁぁぁぁ〜!」
「あああああ〜!」

手も足も出ない…俺は理解した。
これが絶望だと…
…………
魔物からあたしを助けてくれたあの人達がやられている。動けるのは私しかいない。
でも、私に出来るのは祈ることだけ。
それしかできないんだ。
必死に必死に手を合わせて祈る。
//その祈り、届きませんよ。神も悪魔もここには居ないのですから!\\
確かに届かないかもしれない。
それでも私は祈る。
この際、何だっていい。私を、この街を守ってくれたあの人達が助かればそれでいい。
たとえ私が犠牲になったとしても…
カッ
無間の闇に一条の光が当たる。
「力が…欲しいですか?」
温かな声が周りに響く
「どうなってもいい。力を下さい。
あの人達を助ける力を!」
「では授けましょう。あなたならきっと願いを叶えられるでしょう。」
カァァァァァア!
あたしは光の柱に包まれた。
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