ホワイトロータス〜最強のカードコレクターが、禁止カードで無双します〜
榊 せいろ
第1話 死者転生
「やったぞ!ついに手に入った!」
あまりの嬉しさについつい店の玄関で雄叫びを上げた。念願の超レアカード「ホワイトロータス」(時価1000万円)を手に入れたのだ。
「勝さん。そんな大声出してどうしたんですか?」
「やあ、あっくん。ついにアレが手に入ったんだ!」
こいつはあっくん。コレクター仲間の1人だ。
「アレって…この前言ってたやつですよね!やったじゃないですか!」
「ああ!これで全てのtc(トレーディングカード)を揃える事ができた!俺の夢が叶ったんだよ!」
「良かったですよ!あのー、もし良ければ見せてくれませんかね?」
「もちろんさ!」
「ここだと騒ぎになるんでそこの裏路地に行きますか。」
「確かにそうだな。」
俺達は裏路地に入っていった。ここは購入したカードを見せ合ういわば秘密の場所だ。
だがいつもと違う。招かれざる先客がいたのだ。路地の影からやつは突然襲ってきた。
バァン!
金属バットを振りかざし俺の後頭部に当ててきたのだ。
「ぐほぉ」バタッ
突然の襲撃によりそのまま倒れ込む。脳震盪を起こしたようでうまく立てない。
「ふふ…どうです?たまりに溜まった恨みの味は。」
あっくんは含み笑いのまま俺を見下していた。
「あっくん。お前…裏切ったのか…」
「違いますね。最初からあなたを殺す予定でした。」
「そうか…カードを見せる場所をここにしてたのも、俺を油断させてここに来させるためも謀略だったんだな。お前には一杯食わされたぜ。」
地面にはいつくばりつつ、あっくんを見上げる。
「それ、最後の言葉にしときますよ。」
「皆さん。思いっきりやっちゃって下さい。」
あっくんの命令により隠れていたやつらが姿を現した。目が霞んでよく見えないが、10人はいる。
「遊導ォ!よくも俺たちグーグルズをこけにしやがったな!」
「この恨み、倍返し…いや、倍倍倍返しにしてやるよ!」
ガンガンガンガン
金属バットによる猛烈な痛みが全身から伝わってくる。
(グーグルズ。ここら一帯で悪事を働いている悪徳コレクター共か。何度も悪事を妨害して警察に突き出した事もあったし、恨まれるのも当然か…
この人数じゃ無傷の俺でも勝てそうに無い。……相手が1人でも勝てないだろうけど
はあ、せっかく夢が叶ったというのにこんなクソみたいな死に方をするなんてほんと………
ついてないよな)
こんなしょうもないことを思いながら俺は絶命した。
「目覚めましたか」
女の人の声で目が覚める。
「ここが地獄か…静かだな」
「え………違いますよ!ここは神界。私のような神様がいる所です。」
見上げるとそこにはギリシャ神話の女神のような格好の少女が立っていた。彼女は驚いた様子で、顔を少し赤くしている。
「それにしても、ここに来て地獄なんていう方は初めてで、驚いてしまいました。」
「俺には天国なんて似合わねえよ。人様には散々迷惑かけたし、私欲の為に人の心を壊してしまったこともある。どうだ、地獄に落ちる理由として十分すぎるだろ?」
「で、でもあなたは地獄に落ちるような人間では無いと思うんです。」
「そんなことあんたに分からないだろ。」
俺は首を振った。
「私、ここからずっと下界を見ていたんです。ある日、とてもキラキラした物が見えて近づいてみたら乱暴されて息絶えたあなたがいて…それで、どうにかしたいなと思ってここにつれてきたのです。」
「というと?」
「あなたには幸せに暮らしてほしいので、異世界に転生させたいのです。この世界に戻すというのもありなのですが、当然同じ苦しみが待っているはず…だから!」
彼女は必死になって訴えた。徐々に早くなる口調からそれが読み取れた。
「確かにな。俺はある理由で色んな奴から恨まれてるんだ。その方が嬉しい。」
「あ、ありがとうございます!」
「では、私からのささやかな贈り物として
、あなたの持ち物から一つだけ持っていけるようにします。」
「まじか!ありがとう!」
俺は本日2回目の雄叫びを上げた。
「これがあれば、どこにでもいける!」パアア
俺が念じると足元に超巨大な魔法陣が描かれた。
「な、なに?すごく…大きすぎます。」
魔法陣から巨大なショーケースが現れる。無論一つじゃない。俺のコレクション全てだから100台以上は軽くあるだろう。
「これは…一体?」
「俺が今まで集めたカードだ。」
「これ全部ですか?!」
「そうだ。この世にある全てのtcg(トレーディングカードゲーム)のカードを一つ残らず集めたからな。ここまで集めるのにも20年かかった。」
「に、20年!人間の平均寿命の4分の1を使ってまで集めたのですか…」
「馬鹿みたいだろ。」
「いや、とても凄いです。それ以上の物がカードの1枚1枚からこみ上げてきて…私、感動しました!」
カードでこんなにも感動するなんて、変わった神様だ。そんな彼女に一つ提案をしてみた。
「見てもいいぞ」
「あ、ありがとうございます。傷つけないよう大切に扱いますね。」
彼女はどこからか出した手袋を身につけてショーケースのカードを慎重に取った。この神様、カードの扱いというものを魂レベルで理解していたらしい。
「そういえば名前を言ってなかったな。
俺は遊導勝。カードに魂を賭けつづけた男だ。女神さん、俺の魂(カード)を救ってくれてありがとな。」
「ありがとうなんて言われるの初めてで、困って…しまいます。」
女神は少し視線をずらし恥ずかしそうに答えた。
〜しばらくして〜
「勝さん、このカード、銀色にピカピカ輝いてますよ!」
「それはホログラフィックレアのカードだ。」
「この刻印が記されたのは?」
「大会の参加賞だな。」
女神はすっかりカードに夢中になっていた。
俺はTCGを全く知らない彼女のため、いろはから教えているのだ。
〜〜
あれからどれだけの時間が過ぎたのだろうか…まさか、全てのカードについて一つ一つ質問してくるとは思わなかった。久々に熱く語れたのでそれはいいとしたい。だけど…
「かっこいい…」
「主よ、そんなまじまじと見られると困ってしまうな。」
彼女の前にはシャチの被り物とその柄の全身タイツを身につけた筋肉モリモリマッチョマンの変態が立っていた。
何故こうなったか時を少し遡ることにしよう。
.。o○
「ふわ///かっこいい…とてもかっこいいです。」
「それは…え?」
俺は困惑した。彼女が手にしていたのは「オルカマン」のカード。描かれているのはさっき言った通りの人物だ。このキャラをかっこいいと思うとは…流石に品性を疑った。
「これは運命の出会いかもしれないです。…うん、決めました!」ボン!
なんと、実体化したオルカマンがそこにいたのだ。
「なんだこれ…どういう…ことだ」
「………?私の使徒として召喚したのです。」
!!
「勝さん大丈夫ですか?!すごくぶるぶる震えてますよ!」
そりゃ震えるさ。なにせ、オルカマンはその強烈すぎる容姿から『キモオルカ』と呼ばれている。アニメで初登場した時、容姿の話題だけで1スレ(掲示板のスレッド1つ分)が埋まる程話題になったのが懐かしい。
.。o○
「すみません…取り乱してしまって…」
「とにかく、これであなたを転生させる準備は整いました。新たな世界で良き人生を送ってくださると嬉しいです。」
俺の足元に魔法陣が展開されていた。
あれほど語り合った女神と別れるのはとても寂しい。
「ああ、このカードさえあれば俺は平気だからな。」
「そうだ、女神さん。あんたの名前は?」
「トレカといいます。」
「トレカ、色々とありがとな!」
ヒュン
最後に見た彼女は嬉しそうな顔
こうして俺はトレカに別れを告げ異世界に転生した。
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