第3話 忍者と会合

「そういえば隊長はどこに?」

マコトはこの部隊のリー駄―でありこの部隊を築き上げた存在が部室に居ないことに今更ながら気付き、猫宮に尋ねる。

「後ろですよ」

「え?」

「こっちだよ、後輩」

突如視界が暗闇に堕ちる。部室という事もあり警戒心を解いていたマコトは、忍び寄る陰に背後を許してしまう。

だが、マコトも第18部隊に来てもう一年目になり、慌てることもなく「いつものやつか」と落ち着いて対処する。

「腕上げましたね。隊長」

両目を塞ぐその手を解き、振り向いてその姿を確認する。

その漆黒の瞳と腰までかかる麗しい黒髪、そして整った顔立ち。和風美人である彼女には学園の誰もが目を引くだろう。マコトの前に凛として立っている彼女の名前は忍久保(しのくぼ)カエデ。魔道学園の三年次で第18部隊の隊長、つまり学園で選ばれた優秀生の一人である。筈なのだが……

「最近、遅刻が多いらしいね。気がたるんでるゾ、後輩」

カエデはマコトに寄り添う形で胸を擽り、その反応ににやける。

「すみません、ところで先輩は今までどこに行ってたんですか?」またもや慣れた手つきでカエデの手を払い、話を変える。

「ジョリマブのノ・ゾ・キー」

「「はぁ、またですか」」その返事を聞いたマコトとミヤコはタメ息を吐く。

三年次であり、先輩であり、我らが隊長であり、学園が認めた優秀生である忍久保カエデだが、その正体は自称忍者魔法を見に宿しており、その隠密行動を使い女子更衣室や人の秘密を覗くことに楽しみを覚えてしまった、変人である。本人曰く、皆のその変人扱いする視線に興奮するんだとか。

「とりあえず、先輩方。ミーティング始めますよ」と猫宮が鳴く。

遅刻に対してプンスカと頬を膨らましている猫宮ミヤコ、とそんな彼女を撫でて可愛がっている忍久保カエデ。寝起きでまだ瞼が開ききってないガルシア・メリッサ。そして席が無く立たされている乾マコト。

予定より約一時間遅れた第18部隊の今月のミーティングが始まる。



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