ガラスの蠱毒

 森でマムシを採る。

 野でイラガを採る。

 山でハチを採る。

 ガラス瓶に毒を納めつつ巡り歩いて海に来たる。

 足元からは砂を掴む感触。

 眼下に広がるは赤い太陽。

 百番目に採ったウミヘビを入れて固く封をした。

 私はそれを落日に向かって放り投げた。


 様々な顔を見せる月の下で浮かぶ小船。

 幾人もの穢を落としてきた海水に揉まれながらガラスの中は暗く、闇く。


 異国の浜辺に禍客船はたどり着いた。

 船体は魅惑的に鈍く輝く。


 ある者、メッセージボトルと見紛いて無防備に封を解く。

 この時、ある者はある者ではなくなった。

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