第19話 恭子の言葉
「どうなってるのよ?!京都にいるんじゃないの?」
貴は以前の浪人時代を過ごした文京区の下宿に舞い戻っていた。姪っ子の恭子を呼び出し、これまでの経緯を話している。
「まぁいろいろあってな」
「何よ、色々って。折角苦労して京都府大学に入れたっていうのに、1年で中退って。私も協力した身として言うけど、何にもならないじゃないのよ」
「そう言うなって。そもそも政治を学ぶために京都府大学に行ったんであって、それがちょっと違う方向に行ったというか」
「でも、さすがに一年は早いわよ」
「そう思ってさ、こっちから通ってみたけど、やっぱりきつくて」
「何言ってんのよ、情けない。それで京都で何してたのよ?」
「前田慶幸っていう衆議院の議員さんの手伝いをしててだな、その流れで東京でもお世話になってるんだ」
「じゃあ何?その仕事のために大学辞めたってわけ。ふーん、ま、おじさんが良ければいいんだけどね。本当にそれでよかったの?」
「ああ、選択は間違ってなかったと思う。それが俺の着地点の近道だと思うし」
「何よ、着地点って。まさか選挙に出るとか言わないわよね?」
「え?そうだけど」
「は?自分で何言ってるか、わかってんの?おじいちゃんたちにどう申し開きするのよ」
「そうなったらさすがに諦めるだろう」
「そう、ま、いいんじゃない?もったいない気もするけど」
「悪いな、散々世話になっておいて」
「いいのよ別に。私だっておじさんの一件の事は言ってないし。あ、それでね、少し気になった事があって」
「なんだよ」
「おじさんがここを出て3,4か月後くらいかな?私ここに傘を置き忘れたことに気が付いて取りに来たのよ。その時ここで綺麗な女性がずーっと佇んでたの」
<まさか由実奈?ここが分かったのか?>
「そんで、その女性は?」
「ええ、私がどうかしたのか?って聞こうと思ったらぷいといなくなっちゃったの」
「そうか。何気に俺もファンが多いから、京都辺りから来た人じゃないのか?あははは」
と笑ってごまかした貴だったが、由美恵らしき女性が京都にもいたらしいと祇園の杏奈ママも言っていた。由美恵の所在が更に気になってきた。
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