第3話 [ストレス発散]
あの陽キャリーダーを撃退し、下駄箱まで向かうために廊下を歩いていた。
向かう途中、大量の荷物を持っている女子が目に入った。
その女子が———
「おっと……とと、わぁっ!!」
荷物を全て落とし、さらにずっこけていた。
私はイライラしていた。だが今のを見たことでさらにそれが上がった。
「ねぇ……そこのあなた」
「あっ、ご、ごめんない……すぐに片付けますから——」
「違う」
私はその転んでいる女の子に近づき、散らばっているものを拾い始めた。
そう、見ていてすごくイラついた。なぜ一人にこんな大変なことを押し付けたのか。
この子に頼んだ野郎を見てみたいわ。
内心、ずっとイライラしていたがすべて拾い終わり、立ち上がった。
「ほらあんたも立ちなよ。どこ運ぶの」
「え!? でもすごい量あるからわざわざ手伝わなくても……」
「だったら尚更。なんで一人で運ぼうとしたの?周りを頼れ、馬鹿」
「あぅ」
片手でその大量の荷物を持ちながらこの女の子にデコピンをした。
そして図書室まで運ぶと言っていたのでそのまま一緒に向かった。
〜〜
「あ、あの本当にありがとう!」
図書委員会らしく、そのままここに残らなければならないというので私は退散することにした。
「今度から誰か頼ること、一人で全部こなそうだなんて考えないこと。いつか身を滅ぼすわよ」
この子は背が小さいので頭をポンポンとしながら話しかけていた。
「う、うん……」
なんだか顔が赤くなっている気がするが、俯いているのてよく見えなかった。
「じゃ、私はもう帰るから」
後ろは振り向かずに一直線に下駄箱へ向かった。
〜〜
下駄箱で靴に履き替え、私は家に帰っていた。
だがどうやら今日は面倒ごとに巻き込まれる日だったようだ。
「なぁ、ちょっと俺らと遊んでかね?」
「君可愛いねー、どこ住んでんの?」
「俺らが楽しいこと教えるからさぁ」
私ではない。
私の目の前にいる白髪の可愛い女子がナンパにあっていたのだ。
そしてよく見るとそれは聖女様こと、海宝 雫だとわかった。
SPがいつもいた気がしたのだが今はいないようだ。
あー……ほんと、今日は絶賛女の子の日でイライラしてるっていうのになんでさらにストレスが溜まることが起きる……。
ん……? まてよ、ストレス発散……。
私はいいことを思いつき、そいつらに近づき、聖女様を引き離してこちらに抱き寄せた。
「おたくら……この子が嫌がってんのが目に入ってないの……?」
そのまま男ども三人を睨みつけた。
「は? なんだこいつ」
「お、でもなかなか君も可愛いじゃんか」
「どお?君も一緒に」
ふー……。こういう奴らは本当に脳みそが小さいようだ。
「ふん、お前らみたいなクソ野郎どもについて行くわけないでしょ。気持ち悪い」
私がそう言うと気持ち悪い笑みをやめ、ムッとした表情でこちらを見てきた。
「お、おいおい……そんなこと言われたらお兄さんたちキレちゃうぞ〜」
「女二人じゃどうもできねぇだろうがよぉ」
「ちょっくら脅すか?」
はぁ……めんどいなぁ。だけど、あと少しかな……。
「あんたらみたいな無駄な場所にだけ筋肉つけて女子にモテモテになろうとする奴らなんかに負けるわけないじゃん?」
私は前髪を手でかきあげ、バカにするような目で見ながらそう言った。
さぁどうくる。
「こんの……ちょっと顔がいいからって調子乗りやがってェェ!」
「危ないっ!!」
男の一人が私めがけて走り出してきた。
そしてそのまま顔を殴ろうとしてきていた。
女子相手に顔面を殴ろうとするとはどうなんだか……。
私は腰を低くし、左手でパシッと手を弾き、右手の指を指の付け根に置くように折りたたんで相手の顎に向かって殴った。
「ガッ……」
だいぶ勢いよく殴りかかってきていたから反動がすごかったようで、そのまま地面に倒れこんだ。
「テメッ……よくも!」
もう二人が私に向かって殴りかかってきた。どうやら男女平等パンチ保持者らしい。
だがすべて避けたり手で弾いたりして全く当たらなかった。
「な、なんで当たらねぇ!」
「どうなってんだ!」
「空手有段者なんで」
二人の動きが遅くなってきたのを確認し、まず一人仕留めようと思った。
ヘロヘロのパンチを軽く避け、そのまま相手の襟を掴んで背負い投げをした。
「う、うわぁっ!?」
そしてそのまま足を高く上げ、かかと落としをしようとしていた。
「こ……紺色——」
「ふんっ!!」
少し強めにしてこの男の腹めがけてかかと落としをした。
私のパンツ見やがって……もう一発行くか?いや、やめとくか。
「あ、相棒!」
「さて、あとはお前だけだ」
私は最後の一人に向かって一歩ずつ近づいた。
「や、やめろ……やめてくれ……!」
「スーー……ふんっ!」
男めがけて駆け出し、そのままみぞおちを殴った。
「ガッ……あ、あ……こ、のヤロゥ……」
まだ元気そうだったので、その場でクルッと回転して脇腹向かって回し蹴りも追加した。
「おぇ……て、テメェ覚えてろぉ……。お前ら、行くぞ……」
気絶していない者が床に転がっているやつらを引きずりながら立ち去った。
よしっ、少しストレス発散できた。
空手の先生からはあまり外で使うなって言われてたけど人助けなら仕方ないよね。
しかもあれ正当防衛だったし。
「あ、あの……ありがとうございます!」
「ん? ああ、どーいたしまして」
汗掻いたから風呂入りたいなぁ。早く帰ろう。
「じゃあ私はもう帰るから」
「ま、待ってください! お礼させて欲しいのですか……」
「いいや、私がただストレス発散……じゃなくて好きでやったことだしいらない」
私はそのままダッシュして帰った。
〜〜
「お嬢様! 大丈夫ですか!?」
百合園が走って帰ったすぐ後、スーツを着てサングラスをかけたSP達がやってきた。
「見つけましたわ……」
「み、見つけたとは……? まさか……!」
「ええ、私の殿方が……!」
SPはスッと胸ポケットからスマホを取り出し、電話をしていた。
「もしもし、シェフ。今日の晩ご飯は赤飯でお願いします。えぇ、めでたいことがあったのです」
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