このヒーローめっちゃTUEEEなのにすぐやられる

らぶか

第1話 ブレイブレンジャー登場!

三人の青年たちがショッピングモールを駆け抜ける。

関東近郊にできた日本最大級のショッピングモールで、青年たちが走るのにも何不自由ない広さを誇っている。

青年たちは、至極真剣な顔つきでその施設の通路を走り抜けた。


彼らはまた一人の男を追っていた。

量販店で売っているようなパーカーにズボン、そしてスニーカーを履いた普通の男だ。

ただ、帽子とサングラうをかけているため、男の怪しさはショッピングモールの中でも際立っている。

彼は青年たちに捕まらぬように、必死に走る。


青年たちの美しいフォームに対して、男のフォームは走り慣れていないのが明きらかだった。

必死に腕を振って速く走ろうと必死だが、姿勢が前傾しているし、気持ちに体がついていかず、時折よろめいた。

男は今にも青年たちに追いつかれそうだ。


美しいフォームで走る青年たち。

彼らの正体は何なのか?

実は彼らは、地球も守るスーパーヒーローの一員であった。


彼らブレイブレンジャーという。

数年前から地球侵略を目論む悪の組織、ダークセイバーから地球を守るために活躍するスーパーヒーローだ。

彼らの肉体は極限まで鍛え上げられており、常人離れした動きを見せる。


彼らの動きを邪魔しないためだろうか。

彼らは衣類を身につけていない。

普通のスーパーヒーローが着用するような体に密着するスーツはも彼らにとっては邪魔なだけだ。


もちろん社会規範に則るために、水着のような下着は着用しているが。

それも彼らの股関節の可動域を最大化するために、V字のカットになっている。

競泳選手のような精悍な姿で彼らは戦っているのである。


「止まれ!止まらないと撃つぞ」


このままだと逃げきれないと判断した男は、青年たちに向かって銃を向けた。

青年たちは立ち止まり、防御の姿勢を取る。


極限まで鍛え上げられた彼らには普通の銃など通用しない。

しかし、今回は相手がダークセイバーである可能性がある。

ダークセイバーは高度な科学力を持っており、人間の兵器よりも数段殺傷能力の高い攻撃を繰り出してくる。

最強のブレイブレンジャーとて油断はできない。


ブレイブレンジャーは腕を胸の前にクロスさせ、自身の胸部を守った。

それは人間の弱点である心臓を守るためではない。

胸に埋め込まれた「クリスタル」を守るためだった。


彼らの胸には青色のクリスタルが輝いている。

それは彼らがブレイブレンジャーになる際に、施された改造のひとつだ。

このクリスタルは、全身にエネルギーを供給し、あらゆる人間の身体能力を強化する。

ブレイブレンジャーの力の源であると同時に、そこが最大の弱点となっている。

つまり、クリスタルを破壊されれば、彼らは普通の人間に戻ってしまうのだ。


いや、むしろブレイブレンジャーのクリスタルは、人間の体と完全に一体化している。

クリスタルはその性質上、身体の機能を数倍にしている、

つまり、その感覚も鋭敏になり、クリスタルへのダメージは通常の痛みの数倍になって、彼らを責め苛むことになるのだ。


パンッ


と、男は銃を放った。

着弾に備え、身構えるブレイブレンジャーたち。

しかし、銃弾が彼らに到達する気配はなかった。


男が放った銃弾は空砲だった。

それどころか、男の銃からは紙吹雪が放たれている。

おそらく、パーティーグッズの類であろう。


「くっそ…。こけおどしか」


赤い競パンを身につけた戦士が悔しげに呟いた。

彼はこのチームのリーダーでもあるブレイブ・レッドだ。


ブレイブレンジャーは、身につけた競パンの色でコードネームがつけられている。

赤い競パンの彼は、競パンレッド。

ブルーの競パンが競ブレイブ・ブルーで、黒い競パンがブレイブ・ブラックだ。

彼らは常にお互いをコードネームで呼んでいる。


「悔しがっている場合じゃない、レッド行くぞ!」


真っ先に走り出すブブラック。

その後をレッドとブルーが追う。


彼らは、空中を舞う紙吹雪を潜り抜け、男を追った。

紙吹雪が汗ばんだ彼らの肌に数枚貼りつく。


これが男の仕込んだ罠だとも知らずに…。

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