第20話 少年編19

そんないつも仲の良い姉弟のように遊んでいた二人も幼稚園に通い始めるようになると、お互いに別々の友達ができて、二人だけで遊ぶようなことは少なくなっていった。


その新たに出来た多少の距離感が、お互いを異性だという意識を強くし、どことなく今までとは違った感情を双方に抱かせるようになった。


その感情をおさえきれなくなった2人にある変化が訪れる。


その運命の日は、健二に気持ちを読まれ、おちょくられてから2週間後の事だった。


その日は薫の母親が春子に何か込み入った話があるらしく、お茶でもしながらゆっくり話そうと自宅に招かれ、そのついでに隆司も有無を言わさず当然のように連れて行かれて、当人同士は大人だけの大事な会話があるという事で薫の母親に、


「薫ちゃん、あたしらはこれから大事な話があるから、二階で隆ちゃんとゲームでもして遊んでてね~。」


と言われ、薫に先導されて二階の薫の部屋に上がる。


薫の部屋には幾度となく入っているのだが、久しぶりなのと幼稚園であんな事があっただけに、お互いにいつもと違う緊張感が漂う。


隆司も普段はしょーもない冗談を言って薫に突っ込まれたりするのだが、今日はそんな余裕もない。


何か2人ともぎこちなく、気まずい。


そんな違和感のある空気を一変させようと口火をきったのは薫の方だった。


こういう時、度胸があるのは得てして女の子の方だ。

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