賑やかで楽しい深津羽見荘はあきない

闇野ゆかい

第1話かなとニューライフ1

3月下旬の春休み、スーパーで買い物をしていた。

一度も入ったことがないスーパーで新鮮だった。

これからお世話になる深津羽見荘に荷物を置いてから部屋で寛いでいたら、管理人に買い物を頼まれ、現在に至る。

牛肉のパックを取ろうとしたところで誰かの手と触れあい咄嗟に手をひいた。

「ごめんなさい、どうぞ、これ」

相手は、同い年ぐらいの女子だった。控えめな声で牛肉のパックを渡してくれた。

牛肉のパックを受け取り、お礼を言ってその場を立ち去る。


会計を終え、スーパーを出ようとしたら、後ろから誰かがぶつかってきた。

踏ん張って、倒れることはなかった。

あっあぶねぇ、管理人に怒られるとこだった。

ぶつかってきた人がレジ袋から落ちたじゃがいも、お菓子、醤油などを屈んで拾い集めていた。

屈んで、拾うのを手伝っていると手が触れあい、渡して気付いた。

さきほどの女子で涙目になっていた。

「また迷惑をかけて、ごめんなさい。本当にごめんなさい、お怪我はありませんか」

「そこまで謝らないでください。怪我はないですよ。大丈夫ですか、貴女のほうこそ」

「私は、大丈夫です。またお会いできたらお礼をしますので。急いでるので、これで失礼しますっ」

彼女は、そう言って、駆け出す。

可愛かったな、今の彼女。

スーパーを出て、深津羽見荘に帰る。


深津羽見荘に到着し、がらがらと玄関扉を開けるとさきほどの女子が靴を脱いでいた。

「えぇー、なんで貴女が深津羽見荘にいるのっ?」

「えっ、さっきの?」

「ありがとうね。どうしたの、華凪音くん」

と、奥から管理人が現れ、言う。

「カナト、くん?」

「すぅちゃんも帰ってきてたの?綾波華凪音くん、今日から深津羽見荘で暮らす子よ」

「「えええぇぇぇぇーーー」」

俺と彼女は目を合わせ、大声を出す。

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