〈鉄の守護〉

キャルに乗ったポルクはラスーに近づき

「ラスーさん、いらっしゃい」

ポルク達に気づいたラスーは馬車を止め

「ポルク君にキャル君じゃないか」

「今日はどうしたんですか?馬車なんかで」

「あぁ、頼まれてた水場の準備が出来たから、来たんだ」

「そうなんですか!!じゃあ先に行って村の皆に伝えます」

ポルクがそう言うと

ポルク達は奥のほうへと飛んでいった

「わかった」

ラスーはそう答えると馬車を動かし始めた

村に着くと

ラスーが馬車を止め

大勢の小人が立っているのを見つけると

1番前に立っていた杖をついた男性が一歩前に出て

「よく来てくださった、ラスー殿迷いませんでしたか?」

ラスーは馬車から降り

「約束した通り、水場を設置しに来ましたよ、村長」

村長は杖で馬車を指し

「それはそれは、お連れの方も紹介していただきますか?ラスー殿」

ラスーは一瞬驚いた顔をして

「わかりました、降りてこい」

3人の男性が馬車から降りてきた

「すみません、こいつらは俺の後輩で護衛をしてもらってたんです」

3人はラスーの後ろへと並んでいた

「そうですか、紹介してもらえますかな?ラスー殿」

「はい、もちろんお前ら」

大剣を背負った銀髪の男性が一歩前に出て

「俺は〈鉄の守護〉のリーダーで剣士のシャラです」

次に眼鏡を掛けた赤髪の男性が一歩前に出て

「私は魔導師のルィーと申します」

最後に虎の獣人が一歩前に出て

「オレは格闘家のガリュウだ」

「ようこそ、小人の村へ」

村長は軽くお辞儀をし

「私は村長のズィーと申します、歓迎致します」

「いいのか?言っちゃあなんだか、俺達は招かれた訳じゃないのに?」

「ラスー殿、石は持ってますかな?」

「あぁ、あるぞ」

ラスーは〈導きの石〉をポケットから取り出し

ズィーの前に差し出すと

ルィーは興味深そうに

「その石は?」

「これは〈導きの石〉と言って、目的地へと導いてくる石だったよな?」

「そして招かれざる客は決して導かないのじゃ、しかしラスー殿達が来れたのなら〈鉄の守護〉は大丈夫だということじゃ」

「そんな石だったのか、じゃあ返すよ、村長」

ズィーは首を横に振り

「どうぞ、持っていてください」

「そうか?じゃあ遠慮なく」

ラスーがポケットに入れようとすると

ルィーが手を掴み

「待ってください、私に見せてください!!」

「おっおう」

驚きながら手渡すと

キラキラとした目で〈導きの石〉を見始めた

それをあきれた目で見ていると

シャラが

「ラスーさん、下ろしていいのか?」

「あぁ、頼む」

ガリュウは頷くと

馬車へと行き

樽を肩に担いで戻ってきた

「何処に置くんだ?」

「そうだな、村長」

「なにかの?ラスー殿」

「水場を設置するのはどこがいいんだ?」

「そうじゃの」

ズィーは周りを見渡し

広場を杖で指し

「あそこがいいかの」

「わかった」

ガリュウは樽をそこへと置いた

「それでこれは?」

ラスーは樽へと近付き

「これは水の入った樽だ」

「なるほど、それでその樽をどうするんじゃ?」

「あぁこの樽を地面に埋めて、池のようにするんだよ」

「なるほど、その地面に埋めるのは私達に任せてくれないかの?」

「いいけど、どうやるんだ?」

「まぁ見てなされ、土の一族達は樽を囲め」

ズィーがそう言うと

数十人の小人が樽を囲み

両手を組み、目をつむると

ゆっくりと樽が沈みだした

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