Critical Point ⑤
オフィスの言う協力者とやらのバックアップのおかげで海からフランスへ入国した3人は、早速雨によって建物内へと追いやられていた。急遽取ったホテルに滞在する事になり、エイリスは自室でシャワーを浴び、2人部屋のクラヴィスとシャーリーは出掛ける準備をしていた。買い物には似つかわしくない装備を忍ばせ、部屋に入った時に置いてあったメモを握り潰してポケットに押し込む。
廊下に出た2人はメモを扉の隙間からエイリスの部屋に滑り込ませる。顔を見合わせて頷いてホテルから外に出ると、2つの人影が目の前から並んで歩いて来る。
「クラヴィス・ラ・リベルタで間違いないな」
顔を突合せた途端に不躾に問うレオが銃口を向けて相棒に合図を送り、少しずつ距離を詰めるロリーナがスキャナーを取り出す。目に装着されたレンズから個体情報を読み取られ、オフィスにデータが転送される。
「どうだ」
「……一致しません」
オフィスからの返答に戸惑いながらも銃を構え続けるレオは、次の合図をロリーナに出す。
「なにか僕たちに?」
「いやぁ、今ちょっと人探しをしてるんだジョン・ポールさん。クラヴィスって男を知ってたりしないか」
「クラヴィスか、1人知り合いに同じ名前のやつがいるんだけど──尋ねられる事をするやつじゃない」
次は胸に埋め込まれている超小型機械Administrator chip。通称ASCに接続させてより細かな情報を得ようとする。
「シャーリー」
クラヴィスのASCにスキャナーを近付けたロリーナ目掛けて、シャーリーはロリーナの顔と変わらない程の大きな拳を振り下ろす。無抵抗、近距離、そして意識をASCに向けていた事により、受け身をとる暇さえ無かったロリーナは大きく吹き飛び、あまりの衝撃に気を失って地面に転がる。引き金を引きかけたレオをクラヴィスが死角から蹴りを見舞い、握っていた銃が遠くに飛ぶ。
「どちらさん?」
「言える訳ないぞと」
「ならしゃーなしか」
服の中に隠しながら銃口をレオの腹に押し付けるクラヴィスは、ロリーナの手足を拘束して運ぶシャーリーに目で合図を送り、町外れの倉庫に場所を変える。
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