第2話

女友達が来て、色々やってくれたんじゃなくて、おまえの幼馴染であり、男の俺がおまえに携帯で約1時間前に「具合悪いー」って呼び出されて、


俺が頑張って、家事全般やパシリみたいな雑用をこなしたのによ、なんなんだよ、女友達で、30分前に帰ったって!?



ムカつくな。


俺は凍えながら、心のなかで悪態をついてた。

ユーマとかいう男とユーコの会話から察するに、

俺がいたら、イチャイチャできないから追い出した感がぱねぇ!!


俺がブルブルと震えながら、ベランダに通じるドアを叩こうと思ったその時だった。

綺麗なソプラノボイスがした。


「何やってんの、シンジくん?」


「え」


驚いて、声のしたほうを見ると、隣室のベランダに人がいた。



しかも、見知った女性だった。


「寒いのに、なんでそんなとこに

突っ立って震えているわけ?

修行かなんか?」


「ち、ちがいますよ」


「幼馴染にベランダに追い出されんです。

今、本命の男が部屋に来てて」


「ふーん。それはかわいそうね」


同情してくれた彼女の名前は山野井さん。


見た目はロリだが、身体は女女した美人上司だった。



「寒いよね?こっちとびうつってくれば?」


ビビった。凍えているせいか、常日頃、俺をいじってくる上司がやたら優しい。


普段はもう、少し手を抜いたり、些細なミスをしただけでも頭ごなしに叱るこわい女だった。


「なによ、この商品開発の企画書!

こんなんで、会議が通ると思ってんの!?」

「真面目に考えなさいよ!」


「す、すみません!」


正直、彼女のことは大の苦手で。できる限り、かかわりたくなかったのだが。



俺は寒いし、俺は仕方なしベランダを移動した。


やがて。


「あったかい...」


暖房の効いた部屋に入り、俺は生き返った。


それにしても。

テキパキと仕事をこなす美人上司だが。彼女の仕事机はいつも、理路整然としているが。マンションの部屋の中は思いの外、乱雑だった。


もしかしたら、仕事で疲れて部屋の整理整頓まで手が回らないのかもしれなかった。



「ねぇ、シンジくん。ご飯食べる?」


「あ、まぁ、俺、そういえば

昼から何も食べてませんでした」


思えば、俺。いつも幼馴染のユーコファーストで動いてて。自分のことは二の次だった。


「そっかー。じゃあ、食べさせてあげる。

って言っても、作ってほしいな」


「え」


「ベランダに放置されてたの、助けた御礼に、やってよ。私、オムライスがいいな。

冷蔵庫のなかに、材料一式あるからさ」


「わ、わかりました。

御礼、すればいいんですよね?」


「うん」


やたら甘えてくる。



俺はオムライスを二つ作った。


それから、何故かスープやサラダまで作る羽目になり、その後、山野井さんと夕飯を食べた。


「思いの外、料理上手ね!」


褒められた。


仕事では山野井さんに褒められたことなどないので、素直に嬉しかった。


「あー、まぁ、俺、飲食店でのバイト歴、

けっこう、長いっすからね」


「ふーん」


やがて。


食器を洗っていた俺の背中に

彼女が声をかけた。


「もう遅いし、泊まっていきなさいよ」


「え」


「シンジくんの家、どこかわからないけど。

深夜になると外、更に寒いじゃん」


「まぁ、そーですけど..。

流石に泊まるとかは...」


「あっためてよ」


「え?」


「さっき、助けてあげた御礼。

言っとくけどね、ご飯作ってくれたくらいじゃ、足りないわよ?」


「ええー」


俺はこうして山野井さん家に泊まることになった。



シャワーも借り、前の彼氏が残して行ったものだとかいう新品のパジャマや下着も貸してくれた。


正確に言うと、貸してくれたんじゃなくて

「元カレ、取りにこないから、それ全部あげる」と言われもらった。


「ベッドは悪いけど、シングルよ。

狭いけど、我慢してね」


「は、はい...」


そして。


真夜中。草木も眠る丑満時のちょい手前。


事件は起きた。


二人して寝転んでいたんだが、

彼女に

服を脱がされる俺。


「え、ちょっと、やめてくださいよ、、」


俺が着てたパジャマのボタンを慣れた手付きで

外していく。


「やだー!シンジくんなにげに筋肉質なのね!」




実は俺が細マッチョなことが彼女にバレた瞬間だった。



「カッコいいじゃない!」


「そ、そーですかね?」


「隣室に住む、幼馴染の子、バカねー。

料理上手でイケメンの細マッチョな

彼氏なんてかっこいいのにねぇ!」


「あ、いや..照れます」


「私ね、ずっとシンジくんのこといいなって思ってて。私がいじっても、仕事辞めずに頑張っててさぁ。根性あるなぁって思ってたのよ」


「何人も男の子、私のしごきに耐えかねて辞めて行ったけどー。

シンジくんは辞めずに残っててすごいと

思う!」


「俺、打たれ強いかもです。

中学高校と野球部で、スパルタコーチに

いじられて必死に耐えていたんで」


「なるほどね。それで忍耐力が鍛えられたわけか」


「まぁ、そんなとこです」


「うちら、同棲してみない?」


「あ、えーっと...」


「今、彼女いないんでしょ?」


「は、はい」


「決まりね!!」


半ば強引に

同棲することになった。


でも。


彼女との生活は、あまあまで、なかなか悪くない生活だった。


料理は俺ばっかやんのかな?

みたいに当初思ってたが、そんなことなくていろいろと協力してくれた。


部屋の片付けも彼女なりに頑張ってやってた。



「キスすごくうまいのね...」






俺を追い出した

幼馴染とたまに顔を合わせるんだが、あの本命の彼氏に捨てられたと泣きながら話してくれた。


しかもな。


あの真冬日、ユーコの部屋にやってきたあいつはホストで、散々、貢いで、お金も貸してあげたのに返ってこなくて、トンズラ決め込まれたって俺の前でビービー泣いてた。

ユーコに

喫茶店に呼び出されて、


愚痴を聞かされ、散々泣いた後、

「私ぃ、シンジのこと好きだったみたい」


今更かよ。


俺は左手に嵌った指輪を見せた。


そして言ったんだ。



「俺はもう籍をいれたし

いまさら好きとか言われても、


もう遅い」

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真冬日。性格最悪の幼馴染にベランダに追い出された→隣室の美人上司に泊めてあげたんだからと服を脱がされ、ご奉仕する羽目になった。幼馴染よ、今更、俺を好きだと後悔してももう手遅れです。 雲川はるさめ @yukibounokeitai

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