隠されし銀髪美少女がチートスキルで世界を救う
文嶌のと
第一章 リーヴ王国
プロローグ
第1話 千年後の世界
神はなぜ、この世界に
神はなぜ、その
神はなぜ、その
千年前、この魔法世界――ラグナ大陸は
ただ、それは表向きの話であり、実際には弱肉強食の世界は水面下で続いている。不定期に開催される『
堅牢な皮膚と翼を持ち、ブレスを得意とする絶対的王者――
下半身が魚類で、誘惑を得意とする操り魔女――
二十メートルを超える体躯を持つ知恵ある怪物――
横に伸びた長い耳で相手の心を読む森の狩人――
人工知能を有した鉄製の
愛らしいケモ耳とは裏腹に、化け物じみた身体能力を有する――
すべての個性を奪われ、剣と魔法のみを主力とする――
幾度となく闘技会が行われるも、種族間の格差が歴然でこの序列が覆された試しはない。こう見ると全てに屈する
生きとし生ける者すべてに意味があるのだとしたら、無個性の
だが、そんな考えを全て無にするかの如く真っ直ぐな、そして
暗く陰鬱な一室に大きな音が
「おい、大丈夫か?」
音に反応して看守が駆け付ける。青の制帽と上下青の制服に身を包んだ中年男性だ。上着には金の王冠マークの
「あぁ、大丈夫っす。寝ぼけてベッドから落ちたみたいで」
青年は恥ずかしそうに片手を上げて愛想を送る。
「気を付けろよ。今日釈放日なんだからな。頭でも打って教会送りなんて最悪だぞ」
「はは、そうっすね。気を付けます」
今現在、黒ズボンに白シャツというラフな恰好で横たわる青年――アロン=オリバーは窃盗罪で一日だけの収監を余儀なくされた。ただ、働いたのは悪事ではなく人助け。アロンとサラの十八歳の誕生日を祝うため、幼馴染のイスカ=トリオレと三人で酒場に集まったところで事件は起きる。
だが、問題はそこじゃない。アロンが
そんな悔しさをしみじみと感じながら仰向けのアロンは少し長めの黒髪を掻きむしる。岩床の冷たさから解放されようと
「光魔法:レベル1――
すぐさま手の先に白き光が現れ、辺りを照らす。その光を持ってようやく目に留めた。
『教会の祭壇下に33550336』
その八桁の数字に何の意味があるのか定かではないが、そんなことよりも普段よく足を運ぶ教会に何か秘密があるという好奇心がアロンの心を支配していた。その数字を記憶に留め、手の先の光を消す。すぐに周りを確認したが、看守の姿はなく、怪しまれずに済んだことに安堵する。その後、今度は何の迷いもなく立ちあがった。冷えた
発見したメモ書きについて頭を巡らせていると、鉄柵の向こうから革靴の足音が響いてくる。程無くして姿を現したのは先程の看守よりも年配の男性。恐らくは上官だろう。釈放の際には上役が計らうことになっているらしい。
「おい、アロン=オリバー。時間だ」
「はい」
返事をしてすぐ、鉄柵は開けられた。ベッドから立ち上がり、手招きする看守に続き、牢屋を後にする。その様子が羨ましいのだろう、辺りの牢屋内から
最後の階段を上り切ってすぐ、アロンは手で
「これは預かっていたお前の荷物だ。受け取れ」
「どうも」
荷物と言っても手渡されたのは財布、鍵、そして剣だけ。先の二つをポケットへ、剣を腰に携える。
「もう巻き込まれるんじゃないぞ」
「はい」
軽く会釈をするアロンを
「やっぱ気付いてんじゃねぇか」
巻き込まれるな、というワードから
移動し始めてすぐ――牢屋建物横に例の教会があった。聞く話によると、ここはラグナ大陸で最古の教会とされ、『
片方の開いた茶扉から中を覗くと、多くの聖者が祈りを捧げている最中だった。その後も夜までは来客が絶えない。そのため、人がいなくなる夜まで待たねば調べることは叶わなかった。
諦めて通りに戻り、人の群れに乗って歩きながら考える。道にあった時計から現在時刻は午前十時。この時間帯はアロンの通うクレスト
最初から目的地を決めていたアロンは、すでにその懐かしき青壁の民家の前に立っていた。手持ちの鍵を使い、久しぶりに我が家の玄関扉を開けた。
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