悪魔少女(サキュバス)と挑む夢の迷宮~美少女形態のボスモンスターを倒したらご褒美が貰える?~
方針あらた
第1話 悪魔の誘い
最近のクソ暑い天気のせいか、炎に焼かれた悪夢を見てしまった。
「確かに地球温暖化が進んでるな」とぶつぶつ言いながら冷蔵庫を開ける。中からキンキンに冷えた蜜柑ジュース取り出し、それを一口で飲み尽くす。
「ふう~、気持ちいい~」
冷たいジュースの刺激で一気に目が覚めた。
携帯を見ると、なんとすでに午前10時だ。
「遅刻確定か・・・って、なにいってるんだ?寝ぼけたか俺」
無職になってから何度目の朝なんだろうか。もう数える気が起きない。
毎日毎日ゲーム・ご飯・睡眠の三連コンボのせいで、俺の頭がだいぶ悪くなったような気がする。
こんな自堕落な生活を続いたらなんかやばい気がする。そろそろ新しい職を見つけねば。せめて日雇いバイトを探そう。うん、そうしよ。
そう決意した俺は街に出た。
とりあえず近くにあったコンビニへ足を運ぶ。
「いらしゃいませ!」
店員の女の子から元気よく挨拶された。
ただそれだけで、俺の顔が火を吹くかと思うくらい熱くなった。
こんな可愛い子に無職だとバレたら恥ずかしいじゃないか!ここでアルバイトしたいなどと口が裂けても言えない俺はとりあえず適当に雑誌を買い、速やかに自宅まで撤退した。
「はあー。何恥ずかしがってるんだ俺は。もしあの場で勇気を出したら、あの子と友達になれるかもしれないじゃないか?そうしたら彼女になってくれるかもしないのに」
後悔しながら雑誌を読む。
えっと、なになに?最新の人気アダルトグーズ・・・って、これまさかエロ本?いや、エロ本ではない。ではないけど、限りなくエロ本に近い存在だ。
や、やっちまったじゃないか俺のバカ!
雑誌をレジに持ていた時、店員ちゃんの笑顔が消えた理由がようやく判明した。
「あ~あ、もう死にたい。いっぺん死んでみたい。もうあのコンビニに行けない」
ダウンな気分になった俺はベッドに飛び込む。もう何もやりたくない。このまま寝よう。何もかも忘れよう。
その時、ドアベルが鳴った。
誰だよこんな時に。俺は誰にも会いたくない気分なんだ。黙ってやり過ごそう。
「あのーすみません、誰かいませんか?」
「いねえよボケとっとと帰れや」
あ、しまった。口に出た。俺マジでアホだ。
「やっぱり家にいますね。ここ、開けてくれませんか?」
よく聞いたら女の子の声だ。しかもさっきの店員ちゃんの声と同じだ。何で?WHY?
理由を知りたい俺は光の速さでドアを開け、その後思わず目を大きく見開いた。
え、なにこの美人。よく見たらめちゃくちゃ可愛いじゃないか。
流れるような長い黒髪、雪のような白い肌、透き通るような綺麗な瞳。
まるで人形のような可愛らしい顔。
バイトの制服もよく似合う細い体。
唯一の欠点は、胸が小さいくらいか。ていうか貧乳。ぺったんこ。まるで起伏がない平原。そこにあるはずの山がない。鉄板。幼児体型。身長は160センチくらいだから決して幼児ではない。なのにどうして胸が足りないのか。一体なぜ。神様のいたずらか。それとも悪魔の仕業か。
「おいー、聞こえますか?」
「はあっ!す、すまん。ちょっと考え事。なんか用?」
彼女は恥ずかしいそうに目を伏せた。
「その、さっきはごめんなさいでした。わたし、お買い上げありがとうございましたって言えませんでした」
「え、あ、謝る必要はないでしょ?ていうかこっちこそごめん。あんなものを見せてしまって。俺が悪かったよ」
「いえいえ、悪いのはわたしです。わたしはあの時つい緊張してしまって、言うべき事をきちんと言えませんでした」
「いやいや俺が悪かった」
「いえいえわたしが」
「いや俺が」
「いえわたしが」
・・・何やってるんだ俺たち。もしかしてこれは、彼女の謝罪を受けないと永遠に脱出できない無限ループなのか。
「もういいよ。俺はなんとも思ってないから。ていうか、店をほったらかして大丈夫なのか?」
「店には店長さんがいます。わたしが事情を話したら、休憩の許可を貰えました」
「それで急いで俺の後を追ってきたというわけか。で、もう用事は済んだだろう?早く帰ったほうがいいぞ」
「はい。これで失礼します。またのご来店をお待ちします」
真面目な子だ。いや、こんなにもなると、もはや天然記念物レベルだ。
でもそこがかわいい。
「あ、実は、もう一つ用事があります」
「まだあるのか」
「はい。実は、わたしは今、すっごく困ってる事があります。是非、あなたの協力が必要なのです」
「えっと、俺にできる事なら」
「あなたならきっとできます!」
彼女が俺の手を両手で掴んだ。懇願の色に満ちた目で俺を見る。
や、やめろ!そんな純真な眼差しで俺を見るな!
そんな目で見られたら、俺は恐らく理性が持たない!
「わたしと、契約してください!」
「はい喜んで!って契約?なんのことだ?あ、もしかして仕事の契約とか?」
「違います!あ、ごめんなさい。大声を出してしまって。これは外では言えない事なので、部屋の中で話しますね」
「え、ちょ、待って。部屋はまずい、汚いから」
彼女が俺の意向を完全に無視した。おとなしい子だと思ったら、頑固な一面も持っていたのか。
部屋の中まで侵入した彼女は小声で事情を話してくれた。
まずは彼女の名前:セーミスちゃん。道理でアジア系らしくない顔だと思ったらヨーロッパ系か。
次は種族:悪魔。んん?
現在の悩み:死んだ姉を復活させたいけど仲間が欲しい。んんん?
最後は俺への頼み事:彼女と契約して魔法戦士になる。んんんん?
「・・・以上です。おわかりいただけたでしょうか?」
「んんんんん?」
「もしかしてまだ説明が足りないんでしょうか?じゃあ、もう一度最初のほうから説明しますね」
「いや、そんなゲーム序盤のチュートリアルみたいなセリフはいいから。俺がわからないのは、君が本気なのかどうかだ」
「?わたしのどこが本気じゃないように見えるんでしょうか?」
「本当に本気なんだな?」
「はい、本当に本気なんです」
本当に本気のようだ。
要するにあれか。自分を悪魔か救世主だと本気で信じ込む中学二年生か。
妄想にもほどがあるだろう。
俺はよく考えてから、優しい気持ちを込めて彼女に言った。
「じゃあ、なにか証明できるものを見せてくれないか?じゃないと信憑性というのが足りないというかなんというか」
「えっと、今は何も持ってなくて・・・」
「悪魔なら魔法が使えるんだろう?」
「はい、それでいいなら使ってみます。炎の魔法です」
そう言ってセーミスちゃんは両手を前に伸ばして、呪文を唱える。
「ミニファイアボール、出力最小限で発動します」
赤い光が彼女の手のひらから放出され、卵と同じくらい大きさのボールを形成した。
信じられない光景に俺はぽかんと開けた口を閉じる事も忘れ、ただただそのちっさな炎を見つめた。
まさかあれは手品とかじゃなくて、正真正銘の魔法?
ということなら、セーミスちゃんは俺が邪推した妄想ダダ漏れの中二病ガキとかじゃなくて、本当に悪魔なのか?
「どう?これで信じて貰えるんでしょうか?」
気が付くと俺はすでに頭を縦に振った。
「本当?良かったです!」
ジャンプしてはしゃぐセーミスちゃん。その瞬間、炎の玉が空気に溶けたように見えなくなった。
セーミスちゃんは確かに魔法を使った。
その彼女が、俺を仲間にしたいと言った。
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