ライト:エンカウント
代々城
第1話 硝煙と少女
彼は断片的な夢を見ていた。
「今日からあなたはウエノ・サトル。 それがあなたの名前よ」
8歳の小さな彼はホームレスだった。生まれた頃から、両親に捨てられ。廃棄ゴミの中にある食べ物を食べて、飢えをしのいできた。
「私の名前はカミミネ・ユイ。 今日からよろしくね」
ホームレスを拾う変わり者が目の前に現れたのだ。彼は驚いた。
それからというもの、毎日のように1人で生きていけるようにと、徹底的に暗殺術を身につけていった。
彼女との日々は孤独の日々と違って、楽しく幸せな時間だった。
しかし、そんな時間はもろくも崩れさる。
「ごめんね。 弱い私で…力になれなくて。 でも、あなたならこの世界を救えるって信じてる。 きっと」
マフィアの報復によって、彼女が銃弾で重症を負ったのだ。
彼女のいう「世界」のことなんてものは、全く分からなかった。
そして、彼女はゆっくりと目を閉じる。
「私を拾ってくれて、ありがとう」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
肌を殴りつける音で目を覚ます。
「起きろ。 チャイナティーを一緒に飲もうじゃないか」
虚ろなまぶたをゆっくりと開けると、そこに広がるのはひびの入った壁のコンクリートに覆われた場所だった。
そして、黒服のジャケットをまとったマフィア達に地面に押さえつけられてる自分が彼には分かった。
殴られた血が砂に滲み出し、じわじわと痛みが広がってくる。
「国家軍事局の犬が。
「チャイナティーは飲ませてくれないのか…?」
再び、体を鈍い音と痛みが走る。
「黙れッ! 聞いてるのはこっちだ!」
「エドガー、時間の無駄だろ。 さっさと拷問をして吐かせた方がいい」
「待て…ここにまだ誰かがいる。物音がした…」
マフィアのリーダーであるエドガーという人物は会話を止め、広い空間に無音が響く。植野と呼ばれた少年は息を飲んだ。
「誰だッ! 出てこい! 出てこないなら、こっちから撃つ」
コツコツとローファーの音を立てて、少し空いたシャッターの下から現れた1人の小柄な少女。
「こ、こんにちわ〜…」
「撃て」
「ま、待て! 相手は丸腰の女の子1人だぞ!」
植野の言葉も虚しく、無数の銃弾と銃声が少女に向けて撃たれる。
硝煙の中で肉を裂く音ではなく、物理的な金属音が鳴り響く。
「馬鹿野郎ッッ、硝煙で全く見えねえじゃねえか!」
「死ね」
シャッターの外から、もう1人の少女らしい声がすると
向こう側から逆にオレンジ色をした多くの小さな銃弾が突き抜けて、放たれた。
マフィアたちが血を流さずに次々と倒れていく。
硝煙の中、闇雲に銃口を向けていたエドガーだったが、謎の銃弾に撃たれ、気を失うようにして同じく倒れる。
「大丈夫? きっちゃん」
「うん、ありがとう。助かった」
唯一、銃撃戦に巻き込まれなかった植野は何が起きたのか全く把握できなかったが、マフィア達に銃口を向けられていた少女はもう1人の少女の大きなシールドに守られていて無事なようだった。
「あの、あなたが植野智さんですよね…?」
「…ああ、」
「よかった。 無事なようですね。 こんな状態で混乱されてるとは、思いますが…早急にあなたに聞きたいことがあるんです!」
「なんだ、君たちは…」
「私達はレジスタンスで活動している学園都市(イズモ)の女子生徒です!
あなたを助けた見返りにあなたに崩壊した学園を復興、再生させてほしいんです!」
「えっ…?」
「私の名前は
自分より一個下ぐらいの少女に植野は立ち尽くしながら、過去の自分を拾ってくれた彼女に姿を重ねていた。
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