第14話 神にgiveをケチったらtakeをケチられた!!



朱白神社に向かう途中、貧乏神様に服一式をたかられていたのを思い出したが、この時間まだ100均は開いてないだろうから、24時間営業している某メガセンターへ寄ることにした。100円以上してしまうが比較的他で買うより安いだろうからまぁ良しとする。……補導されませんように。



ーーーーーーーーーーー



ー朱白神社ー



庭では、式神巫女が今日も日課である掃き掃除をしている。


暫くすると、、、



…サァァァーーーーッ…




神社の木々が揺れ、境内に風が吹き抜けていく。風に神聖な気も混ざっている。


異なモノがお・越・し・に・な・る・前兆だ。



「御出迎えしなくては…!」



急いで社に向かう。



「……この気は…」



パアァァァーーーーー



光と共に現れたお方は、布面積:素肌面積=3:7にな・っ・て・し・ま・っ・た・、貧乏神様だった。


「やぁ、珠緒」

「ようこそおいで下さいました。ご用件をお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「あぁ、この間の少年が僕に会いに来るらしいからね」


…わざわざ自ら先にいらして待っていなくても…よほどあの跡取り息子を気に入ったのだろうか?


玄龍寺の式神といい貧乏神様といい、本来あり得ないことだらけだ。


「…そろそろ来るんじゃないかな」



貧乏神様が言うのと同時に、神社の木々がザワザワし始めた。


異なモノが来る前兆だ。



「!」



来た!


ビニール袋片手に鳥居を潜って来る。


「あっ!無礼式神巫女!…えっ!?貧乏神様が来てる…てか、やっぱり着てる物は金太郎剥き出しファッションのままか」



無礼はお前だ。あと剥き出しなのもお前のせいだ。



「僕の衣服セット買って来てくれたんだね……カッパ一式」


!?


「えっ、まだ中身見てないのに何でカッパだって知ってるの!?見てたの!?」



カッパ!!??カッ……カッパ!!??神様への捧げ物に…



カッパ!!??神様にカッパ着ろと!?バカなの!?


「カッパなら雨風凌げるし、あったかいし、(金太郎隠せるし ボソッ)一石二鳥(三鳥)かなと思って!」


「……………そう、ありがとう」


金太郎言うな無礼者!!!貧乏神様はこの跡取り息子を甘やかし過ぎでは!?



『…珍しく珠緒が取り乱してる、ふふ』


「掃除の続きをしてきていいよ」

「! …ありがとうございます。それでは失礼いたします」



確かにやる事は山ほどあるので、掃除に戻る事にした。


…この後の展開も気になるが、後ろ髪を引かれる思いでその場を去った。





ーーーーーーー




式神巫女が頭を下げて去って行ったのを見て、貧乏神様がこちらを振り返る。


「で、他にも僕に何か用があるの?」




俺はこれまでの経緯を簡単に話した。




「なので、何かご教示願いたいです」

「…え、君、タダで何かしてもらえると思ってるの?お賽銭の意味分かってる?」

「…ここにお賽銭箱ありませんから」



そもそもお金持ってませんから!てか、今は電子マネーの時代ですよ貧乏神様(俺の残高は別として)。時代に取り残されますよ。金太郎服は既に取り残されてますけども。 



「…まぁ、この神社はお金の代わりに、法力・神力・徳に見合った能力を授ける神社だからね。君にも、もう与えたけど」


!! いやいやいやいやいや!


「与えたの試練じゃないですか!能力とか御褒美的な物はまだ貰ってませんけど!?」

「褒美を与えるには徳が足りなかったからね。だから温情で試練チャンスを与えたのに。十分有難いことだと思わない?」


それはまぁ確かに…そう…なのか!?命かかってますけど!!寺の皆様も巻き込んでの大ごとなってますけど!?

巷ちまたにも迷惑かけてますけど!?


「カッパ分のアドバイスくらいはいただきたく…」

「え、それは君が僕の服を破いちゃった代償でしょ?」

「クッ…」


貧乏神だけあってシビアでケチくさい。ちょっとのヒントくらい与えてもバチは当たるまいに…。ケチー。ケチー。


「…君は相変わらず不心得者だね。そもそもカッパ一式610円分のヒントとか…たかが知れてると思わない?」


値段バレてる!!怖っ!でもお値段以上のハズだから610円以上の価値があるハズ!!


「いや、だって!試練ゆーてもけっこう大変な事になってるんですよ!?下手したら五臓六腑と顔面風穴空くとか、肉片吹っ飛ばされちゃうとかしちゃうんですよ!?え、俺、試練に命かけなくちゃいけないくらい行い悪かったでしたっけ!?それとも死ね的なイベントか何かなんでしょうか!?」



わぁわぁ勢いで押し切ろうとしている俺に、貧乏神様が溜息をこぼす。


「…はぁ、君がそこまで言うなら…しょうがないね」


と、貧乏神様は手を伸ばしてきた。そしてそれが心臓前でピタリと止まる。


グッ…


「!!」


貧乏神様の手が、俺の体内に入って来たような圧迫感を感じた。



……ギュッグィッ


「!?」


何かを掴まれ引っ張られた感じがした。何が起きたのか不思議に思い、貧乏神様を見てみると、手には束になって結ばれている札?みたいな物を持っていた。


「…これは、君の暦札。君が産まれてからこれまでの16年間、どんな風に生きてきたのか全て記されている。この暦札を持って、君が子供の頃、秘密で一人冒険者ごっこをして遊んでいた秘密基地の近くの廃神社に行ってみるといいよ」



うおおおあああぎやあぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!



「何で知ってるの!!?俺の子供の頃の可愛らしい黒歴史!!!!!」

「あはは…黒歴史は今も継続中なんじゃない?」

「え、どれのことを言ってるの!?」

「…黒歴史候補の心当たりがたくさんあるのも困りモノだよねぇ。まぁ、行くことを強制したりはしないけど、運が良ければ何かを得られるかもしれないね」

「!」


…ん?


「運が悪かったらどうなるんだ?」


「……………」


ここで黙秘!?怖いんだけど!俺どうなっちゃうの!?


「…君次第だよ」


え!これも試練なの!?けっきょく試練なの!?貧乏神様には何を言っても頼んでも結果試練になるの!?"貧乏神様=試練"になるの!?『貧乏神試練』なの!?


「君は本当にビックリするくらい不届き者だね…。まぁ、そもそも神様への衣服の捧げ物に安物カッパを選ぶ時点で不届き者だよね。自分は与えないで相手には求めてばかりとか…そーゆーところだよ全く…=3」

「すいませんでした!!」



…今度来る時は、余ってる服持ってこよう。



「…なんでお古前提なの?そーゆーところだって言ってるのに、、、何回言えば君は分かってくれるの?」



…仕方ない。俺が買うわけじゃ無いから心苦しいんだけど、今度からは貧乏神様の分も作務服かなんか発注する時、一緒に注文してもらおう。



「君のお小遣いから買えばいいよ」

「えっ、鬼なの!?お年頃男子の微々たる貴重なお小遣いなのに!」

「修行に専念してればお金なんてそんなに使うこともないでしょ」


ぐっ…正論を突かれた。


「じゃぁ、僕はもう行くからね。」



貧乏神様が、バサっとロングカッパを靡かせ、光の中に消えて行く時、



…期待しているよ、と微笑んでいたような気がした。



「……………」



改めて暦札を見る。何て書いてあるのかは分からない。

でも、自分を成長させるためには行くしかないのだろう…。



「……はぁ。……行ってみるか、廃神社」



俺は覚悟を決めて、廃神社に行ってみる事にした。


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