体育祭(バトルオブリリー)~誰がために鐘(チャイム)は鳴る~~

高井カエル

決戦前夜

第1話

午後の部:第Ⅱ競技〈玉入れ(デッド・オン・ガード)〉


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 うだるような暑さだ。

 強烈な日差しに、肌が焼ける音がしそうほどだ。

 息が切れる。

 上空からの爆撃で地面が抉れる。

 あまりの爆音に、すでに耳はほとんど聞こえていない。キーンッという耳鳴りがもう何時間も続いている。


「もう少し……。あと……もう少しなんだ……」


 やっと、ここまできた。

 ここに来るまで、一体、いくつの命が失われたであろうか。


「あの網に……。あの網にさえ届けば……ッ!」


 数々の犠牲の上に、この体はある。

 しかし、立てない。膝に力が入らない。


 右手にはお手玉。

 左手はすでに失われている。

 赤いお手玉は、黒ずんでいる。もはや、元の鮮やかな赤ではない。

 しみ込んでいるのだ。

 自分の血が。

 そして、仲間たちの血が――。


『この純白のハチマキを奴らの血で汚させるでない。そして、奴らの旗を、俺たちの血で赤く染めようではないか!』


 尾崎大将の言葉が頭をよぎる。 

 名もなき戦士のために、自らの命を賭けた尾崎大将の言葉が。


 そうだ――。

 俺たちは白組だ。

 誇り高き白組なのだ!

 

 立て!

 立ち上がれ!

 この校庭に沈んだ戦友たちのために!

 自陣の網は猛攻をしのぎ、まだ死守されていると信じて!

 この玉をあの網へ入れるのだ!


 ※これは、正真正銘、体育祭の一幕です。


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