第3話

俺の抱えていた懸念は恐ろしいことに

やがて現実になる。


夏のある日のことだった。


こんな噂が一学年のなかを駆け巡った。

当然、その噂、俺にも聞こえてきた。


何しろ、俺の名前が噂のなかに入っていたんだ。

というか、もう。噂を流したのが俺の友達のユーマだった。


噂の内容は、


学年一のイケメンで頭脳明晰にして運動神経も抜群な藤島くんが俺の幼馴染マヒロに告白したはいいが、振られた、ということだった。

お昼休みの体育館裏。現場にたまたま居合わせた、サボり常習の男子で一応俺の友達ユーマが、告白の一部始終を物陰から聞いてしまっていた。


告白だけではなく、

マヒロに詰め寄って、

「何だよ、好きな男がいるっていうのかよ!?」


友達の話によれば、マヒロはこくこくと何も言わずにうなずいたんだが。


藤島は引かなかった。


「俺よりいい男がこの高校には、ひとりもいねぇだろ?

ってか、いるわけがねぇ!

とりあえず、俺と付き合っておけって言ってんの」


そう言いながら、めちゃくちゃマヒロに近づき、終いには顎クイしてたんだと。


この時点でもう、藤島のやつは

超絶ナルシストだと思う。


「誰だよ、好きな男がいるなら教えろよ」


そう言いながら怖い顔して、マヒロ相手に凄み、マヒロはぼそりとこう呟いたという。


「シンジ....」


一旦、回想を終えて、友達のユーマが

俺に向かって話してくれた。



「そこで、お前の名前が出ちまったんだよ」


「た、確かに、シンジは、お、俺の名前だな」


「だから、藤島は真っ赤な顔してこうキレたんだ」


「シンジ!?まさか、あれか!

たまにおまえと一緒に帰ってる地味で陰キャで俺よか全然背も低いあの、冴えない根暗男子か!?」


ユーマは、藤島の声真似をしつつ、

拳を少し振り上げてみせた。


随分と熱演だった。


「それにしても、俺、ボロクソ思われてんだね。地味で陰キャで冴えない、か。

ま、言い返せないけど、あまりに俺のこと言い当ててて」



「藤島がキレるわけだよな。

まさか、シンジに負けるなんて、

思ってもみなかったんじゃねぇか?」

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