02
右手。彼の手の温もりを、なんとなく思い出す。
ひとりの夜。窓の外には、ネオンと、星空。この街の夜景は、綺麗だった。街の明かりがあるのに、星空も見える。夜空に反射しない特殊なネオンが街を染めているから。
このネオンみたいに、彼の心を照らせないだろうか。彼のふれられたくない場所は影で隠して、彼が光を求めているところだけ、明るくしてあげたい。
土台、無理な話だった。まず、私は彼をあまり知らない。仕事も、私生活も。好きな食べ物も。知らないから。きっと、迷惑になるだけ。彼の隠したいところを照らして、彼が光を求める部分に影を落とす。知らないから。彼のことを。
夜空だけが、綺麗に。
流れ星。燃え切らなかったのか、空に長く線を引いている。願い事。すればよかった。何もせず、その流れ星だけを眺めている。彼に。彼のために、何かしてみたい。そして、彼のそばにいたい。できるだろうか。私に。
自問自答は、この街の明るい夜に溶けていく。結局、無理な話。そう。無理な話だから。せめて、今は。彼のことを考えていたい。
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