流れ星が逃げる前に(f)

春嵐

01

 初めて会ったときから、ずっと。消えてしまいそうなひとだと思った。それでいて、心の奥に、暖かい熾火おきびのような、やさしい何かがある。


「凍華」


 なのに、彼の名前は凍華。凍の華。真逆だと、いつも思う。

 振り向いた彼が、やさしく笑う。手が差し出される。それを握って、ふたりで街を歩く。最後になるかもしれないデート。いつもそうだった。きっと彼は、いつか。私の前からいなくなってしまう。だから、今。せめて彼の近くにいたい。彼の暖かい心を、感じていたい。

 暖かい手だった。

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