第2話 所有物(母×娘)

「どういうことか説明してよ」


「う、うん」


 わたしは目の前にいる家族の説教を受けていた。


 彼女は椅子に座りながらわたしを見下し、そしてわたしは正座をして、気まずそうに顔を俯けている。


「家のルールはしっかりと守るって言ったわよね? なんでそれが出来ないの?」


「ご、ごめんなさい。断り切れなくて……」


「いつもそればっかり、自分の事分かってる?」


「ご、ごめんなさい」


「はぁ、ごめんなさいしか言えないの?」


 彼女はわたしをしかりつけながら、せわしなく机に指をトントンと叩いている。余程わたしのしたことが腹立たしいのだろう。


 彼女が怒っている理由はあらかじめ決めている門限を破ってしまい、夜遅くに帰ってきたからなのだ。


 外はもう暗く、静まり返っているせいで会話の間が開くと、カチカチと時計の針の音が妙に木霊する。同時にドクンドクンと心臓の音が自分の中でうるさいほど鼓動する。


「いつも言ってるよね。女の子一人が夜遅くふらふらなんて危ないって。何度言えばいいの?」


 彼女は声を荒げてまたわたしをしかりつける。それがずしりと心に突き刺さる。でも説教というよりかはまるで独占欲を暴露しているみたい。


 でもわたしの今の立場は下だ、逆らうことは出来ない。それにこう彼女の声を高圧的な声を聞いていると妙な高鳴りが湧いてくる。


 変な事とは分かってる。だけどそんなわたしの心情に変化に気が付いたのか、彼女は急にわたしのあごを指でくいっと持ち上げる。そして無理やり顔の視線を合わせられてしまう。


「ねぇ、気づいてる? 怒られてるのに顔が真っ赤。もしかして興奮してるの?」


「え!?」


 ドキリと、その言葉を言われて思わず声に出して驚いてしまう。だがその瞬間だった。


「あっ!?」


 バチンと頬を叩かれた。痛みがすぐに走り去ると、そのままじんわりと叩かれた場所が熱くなっていく。だがそれは一発だけではない。二発三発と何度も叩かれていった。


 痛さのあまりに、目から涙が滴ってくる。だけど体に火照りを感じてしまう。


「これって他人から見たら子供虐待になるのかな? でもさ、さっきからますます興奮してるでしょ?」


「え、あ、そんなこと……」


「パンツぬれてるよ?」


「う、うそ!?」


 それを指摘されると、確かに濡れている感覚を実感する。そしてスカートからパンツが見えてしまっていたことに羞恥心を覚えて慌てて、手で覆った。今まで以上に、顔を赤面させてしまう。本当に体が熱い。


「ねぇ、実の娘から、罵られて叩かれて気持ちがってるの? ねぇ、答えてみてよ、『ママ』?」


 そして最後に娘は母のわたしに向かってそう言ってのけた。


「…………、すごく気持ちいいです」


 娘の高圧的で、かつ悦に浸るその表情に、わたしは背徳感を味わいながら快感を享受していた。

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