第11話:第2章⑨宣戦布告
……
「女子?!?」
須磨は宅井を勢いよく見た。
「なんだよ。女子で悪いかよ」
「お前、男じゃなかったのか?」
須磨は指差しおののきびっくりした。
「違うんだなーこれが。お前のように勘違いする奴は多いけど」
「だって、お前、自分のことを僕って」
「僕っていうのは癖なんだ。小さい時にかっこいいと思って言っていたらそのまんま」
「でも、体型が」
「それは言ったらダメだよ。一応気にしているんだから。それに、昔ならブルマで判別出来たかもしれないけど、今は皆ハーフパンツだからね」
「それから、えーと、えーーっと」
須磨は頭を抱えて混乱していた。
「あれ?もしかして異性として意識した?」
宅井は小悪魔的に言った。
「いや、それはない」
須磨は冷静に否定した。
……
ポカーン!
頭にたんこぶを生やした須磨は佐藤の横で一緒に伸びていた。手を赤くしている宅井は大虎に先ほどのことを説明していた。
「……ということです」
「なるほど、佐藤がそんなことを」
「だから、まぁ、彼はそこまで悪くないです」
「まぁ、そこは別にどうでもいいけど」
「どういうことです?」
宅井は大虎に質問した。
「佐藤が悪いことをしていることは俺たちの中でも問題視していたからな」
「だったら問題ないですよね?」
「そうだな、だが……」
「だが?」
大虎の視線が須磨に向いていることを宅井は見ていた。
「こいつ、佐藤に勝ったんだよな?」
「そうですが」
「しかも、片目が見えない状態で」
「はい」
大虎は宅井に確認した。
「佐藤はうちの卓球部では特別弱いわけではない。スタメンに入る可能性もある。それを1年生で勝つなんて」
「すごいですか?」
「すごいな。まるでかつての俺を見ている気分だぜ」
白い歯を見せてカッコつけている大虎を宅井は無視して、目を覚ました須磨のところに向かった。
「大丈夫か?」
「おめーのせいだろ!」
須磨は宅井に対して目が飛び出るくらいの勢いで言い返した。
「まぁ、大丈夫だったらそれでいいじゃないか」
「大丈夫と一言も言っていないぞ?」
「そんなに話せたら大丈夫だろ」
宅井は悪びれる様子が微塵もなかった。
「たしかにそうだけど、お前には言われたくない」
「そうか」
「そうだよ、というか、あの人は何をしているんだ?」
須磨の視線は白い歯を見せてかっこいいポーズをしている大虎に向けられた。
「うっさい。なんでもいいだろ!」
大虎は頬を赤くさせて歯を隠した。
「どうせあれだろ?俺のほうが強いとか言ってカッコつけていたんだろ?」
「そうだよ。そんなところだよ。悪いかよ」
大虎はぶっきらぼうに言った。
「あぁ悪いね」
「何?」
「だって、俺のほうが強いぜ。お前なんかに負けるか」
「なんだと?訂正しろ」
「ほー、あんたの方が強いと言いたいのか?」
「そっちじゃねぇ。お前、じゃなく、先輩、と呼べ」
大虎は妙な切れ方をした。
「俺の方が強い、は別にいいのか?」
「それは別にいい。それくらいじゃないと面白くない」
「あんた、面白いな」
「先輩と言えー!」
大虎は声が裏返った。
「声が裏返っているぜ、あんた」
「先輩と言えー!!」
まだ声は裏返っていた。
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