第53話 かけら

薄曇りの空

薄暗い海

白い波飛沫


砂浜でサンダルを片手に

裸足で人のいない海辺をゆっくり歩く


いつかあの人と歩いた潮騒の響く海──


砂浜に足跡をひとつ残しながら

海へ近づく


暗い波は打ち寄せては返す


いつか来たあの人のかけらも

波に揺られて白い泡を広げて

打ち寄せるだろうか

一緒にいた私のかけらとともに

白い泡になり……

様々な想いのかけらは

打ち寄せては返す波に揺られる

そんな気がして


時折足先に冷たい水の感触

あの人に触れたくてしゃがみこみ

サンダルをおいて手を伸ばす


白い泡の弾ける薄暗い波打ち際で──

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