第47話 桜吹雪

あなたの好きだった染井吉野は

今年も薄紅の蕾をつけて

優美にその花を開きそして風に散って逝った


花は終わり優しい黄緑が伸びやかに葉を開き

新しい季節へとバトンが渡される


風が強く吹く中私は立ち止まる

今は緑の並木道ひとりきりの私


思い出すのはいつか見た桜吹雪の中のあなた

桜の花びらを手のひらに肩に乗せながら

花が散るのは寂しいねと切なそうな表情で

見上げ呟く声

それは幻想の桜吹雪の中に消えて──


緑が風に揺れる

光が透けて新しい季節は

目の前にあるにもかかわらず


私の心は今も幻の桜吹雪の中

あなたの姿を見つめている

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