第40話 あなたの匂い

樹々の眠りを覚ますような

あたたかな陽気


春の香り

花々は咲き乱れる


そっと花芽をふくらませ

つぼみはゆっくり花びらをのばして

ほどけるように


色とりどりに花は開いていく

目覚めるように

緑の芽が伸び葉を広げる

目覚めるように


白いベンチに座る私の隣には

眠ってしまったあなたの姿

ゆらり幻が目に浮かぶ


ふとした拍子に香るようなあなた

私はあなたの匂いを忘れられないまま


陽の光はふりそそぎ

花木は光を宿すように輝きながら

春を歌い語り咲き誇っているというのに


私は白いベンチの隣にいない

あなたを見つめ続けていた

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