第35話 薄紅の軌跡

薄紅の見事な枝振りの枝垂れ桜

ゆらりゆらりと揺れながら


春の風に流れるように

薄紅の軌跡が目に焼き付く


遥か遠い陽の

落ちた光に花びらは仄かに透けて

薄紅は光を帯びながら

微かに紗のかかる青の空に映える


花は咲きほこる

そこにあなたがいなくとも──


私は目を花を映したまま

あなたのかわりに見上げるばかり

この風景をあなたはどう思っただろうか

心はあなたに囚われたまま


ああこんなにも綺麗に咲いた花を

見せることが出来ないなんて


揺れる薄紅の花枝

揺れるもういないあなたの姿

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