第21話 女子二人 ぶっちゃける③

 藤島の、推しがどれくらいに素晴らしいかの説明は約1時間続いている。

 物凄い情熱である。


 だが、正直に言ってエルザには理解できなかった。

 そもそも、エルザにとっては男性に対して好きとか愛しているとかいう感情が理解できないのだ。

 いまだに恋愛経験ゼロ。

 そういったエルザにとって、アイドルとかは理解できない対象なのである。


「まあ、いいっスよ。じゃあ、とっととあっちの世界に帰りましょうか」

「そうね、早く行きましょう。ところで、気になっていたんだけど・・」

「なんスか?」

「私たちがこっちに来た時に、言葉が通じていたけど。こっちの人って日本語を話しているの?」

「いや、そうじゃないっス。私のこの指輪に魔法が組み込まれていて言葉が変換されて伝わるらしいっス」

「なるほど、だからエリザベスさんも日本語を話せるんですね。でも、普段と今で話し方はどっちが普通なの?」

「ええと。こっちが普通っす。いつもの話し方は隊長に、おしとやかにしたほうがもてるって聞いていたからっス。そっちの方が実際、ご飯を奢ってもらえるっスから」

「へえ、そうだったんだ」

「あと、日本語を話せるのは指輪のせいじゃないっスよ。ちゃんと日本語は勉強したっスよ。指輪が無くても問題ないっス」

「え?じゃあなんで、その指輪をしてるの?」

「日本語は出きるんスけどね・・・英語がさっぱりできないっスよ」

「なるほど・・・」

「やっぱり、この姿で英語ができないってわけにいかないっスから」


 そりゃそうだ。


「ところで・・指輪で会話ができるってことは・・・」

「なんスか?」

「あの二人・・今頃、誰かに会っても話ができないってこと」


 エルザは、あ!と言う顔をした。

 すっかり忘れていたのだ。


「そうっすね・・・やっぱり、めんどくさいんであの二人おいていきたいっスね」

「そうね、契約は関係ないみたいだけど」

「あ・・・言い忘れてたっスけど。あの二人に魔法がばれたら、少なくともあの二人は戻れなくなるっすよ」

「それは・・契約のせい?」

「そうっす。こっちの世界では問題ないっスけど。あっちの世界で魔法を知ってるわけにいかないっすからね」


 藤島とエルザは顔を見合わせて視線を交わした。

 ふたりの意見は一致を見た。


「やっぱり、ほおっておきましょうか」

「そうっスね。置いていくことにするのがいいっスね」



 というわけで、隊長にスマホで伝えた。

 そしたら、めちゃくちゃ怒られた。



 ”そんなやつら、この世界に置いて行かれると迷惑だ!”

 ”ちゃんと全員を連れて帰れ!!”



 あぁ、めんどくさ!!


 しょうがないから、拾いに行くか。

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