第13話 お披露目
その日。
朝から異世界人が4人そろって裏庭に集まっていた。
庭には穴が掘られていて、木桶が穴の底に入れられている。
何やら、黒っぽい粉が桶の中に見える。
ラーシン将軍とヒッチ隊長。そして10人くらいの兵士たちが集められていた。
椅子に座って、それを眺めるラーシン隊長。
表情こそ、にこやかに笑っている。
しかし、内心では全く期待していない。
そのラーシン将軍に対して、田中が一生懸命説明していた。
「異世界では、火薬という兵器がとても発達しています。火薬というのは、爆発する薬物です。
この薬物に火をつけて爆発させれば、相手に甚大な被害を与えることも可能です」
「ほう・・どれくらいの相手に被害を与えられるのでしょうか?」
「それこそ、何万もの相手でも壊滅させることができましょう」
「それはづばらしいですな」
そう言って、がっはっはと大きな声で笑う。
その背後では、ヒッチ隊長が無表情で立っている。
どちらかというと、軽蔑したような顔だ。
無理もない。
あたりには、かなり薄まったとはいえ異臭が立ち込めている。
糞尿で兵器が作れるなんて、信じろという方が無理である。
「では、その威力を今から見せていただけるのでしょうな?」
「はい、もちろんです!」
田中は、侍女にお願いしていた火のついた松明を受け取った。
「では、いまから火薬の威力をご覧いただきます」
そして、庭に埋めた木桶に離れたところから松明を投げ込んだ。
”ボン!”
とでも、爆発することを期待していたのであろう。
田中は、投げ入れたと同時に慌てて飛びのくように離れた。
しかし
実際に起こったのは、一瞬黄色い炎がちょっとだけ大きくなったかと思うと黒い煙が上がっただけであった。
そして、その場に漂う異臭。
日本から来た4人には、それが硫黄のにおいだとわかった。
しかし、カルマン帝国の人間からすると・・・トイレの異臭と区別がつかなかった。
藤島は、田中に小さな声で言った。
「ちょっと!あれだけなの?どういうことよ!?」
「いや・・・こんなはずはないんだけど・・・」
「事前に実験したんでしょうね!?」
「いや・・・そんなことはしてないけど・・」
将軍が言った。
「まさか、これでおしまいってわけではないでしょうな?」
低い落ち着いた声が逆に恐ろしい。
「とんだ、期待外れですな」
ヒッチ隊長が冷たく言い放つ。
お披露目は大失敗であった。
と思われたその時。
「あ・・・・?あれって?」
吉岡が指さした。
木桶の中から火花が上がり、だんだんと移動していく。
よく見るとロープのようなものが続いていた。
まるで導火線のように・・・木桶から出ていて、火花はそれを伝ってパチパチという音とともに移動していく。
木桶から出て・・草むらの中に入っていき、見えなくなる。
しかし・・音はかすかにしている。
パチパチ
パチパチ
そして・・草むらの中から急に・・・
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