第3話 チートスキル

「今日はゆっくり休むとよい!!明日は部下から我が国の状況について説明させる!」


 ラーシン将軍はそう言って、出て行った。

 何人かの侍女を残して。


「なんだと?冒険者ギルドがないだと!?」


 召喚された夜。

 我々の担当だという侍女に、この世界について質問していた田中君が詰め寄る。


「ええ・・・そのようなものは聞いたことがありません」

 かなり、引き気味の侍女さん。

「それじゃあ、冒険者はどこで仕事を凱旋してもらうんだよ!?」

「ええと・・・冒険者というものもありませんが・・」

「じゃあ、ステータスの鑑定は?どこでできるんだ?」

「すてー・・・ステータス?ですか?それも聞いたことがございません」



 田中君は茫然として、叫んだ。

「こんな・・・こんな世界は、異世界じゃない!!」




 侍女さんの目は明らかにかわいそうな人を見る目になっている。

 それに気づかない田中君は一人で盛り上がっている。

「せっかく異世界に召喚されたのに、チートスキルが何なのかもわからないなんて・・・」



「タナカさん・・チートスキルってナンですカ?」

 エリザベスさんが聞いた。

 明らかに、不審な言動をしている田中君に対しても、優しく聞く。本当にエリザベスさんはいつも優雅である。

 そんなエリザベスさんに対し、田中君はまくしたてるようにしゃべった。

「異世界に召喚されたならチートスキルが常識なんです!勇者召喚されたからにはなんらかの特殊な・・・才能というか力というか・・・そういうものが与えられるべきなんです!それがテンプレというべきものなんです」

「はぁ・・サイノウですカ・・」

 釈然としない感じで、首を傾けるエリザベスさん。

 しぐさがかわいい。



「侍女さん。この世界ではどういう風に敵と戦うのが普通なんですか?」

 藤島さんが聞いた。

「ええと・・剣とか槍とかですね。弓矢とかもございますが」

「なるほど・・普通なんですね・・・。刀とかもありますか?」

「カタナですか?」

「そう、片刃の武器です。剣のようですが、片方にしか刃が無くて曲線的な刃物」

「それなら、西の国で使われているとお聞きしますわ」

「そうですか・・それを手に入れたいですね。

 ところで・・」

 真剣な顔で、藤島さんは聞いた。

「鉄砲はありますか?」

「テッポウ・・?」

「火薬を使って弾を打ち出す武器です」

「カヤク?」

「火をつけると破裂する・・薬品です」

「そんな薬品。きいたことがございませんわ・・」


 それを聞いた田中君。

 急に、満面の笑みを浮かべて叫んだ。


「そうか!!科学技術!!それこそがチート!!そうだったのか!!」

 ガッツポーズをする。

 それに対して、藤島さんがあきれたように言った。

「ばか・・火薬の作り方覚えてるの?」

「あ・・・」

 上げていた手をゆっくりとおろし・・だらんと下げた。

「火薬がだめなら・・他のものが・・」


 その時、エリザベスさんの目が光った気がした。


「コクショクカヤクなら・・・イオウとショウセキと炭で作るのでしたカシラ」


「「「え!?」」」

「ザイリョウが手に入れば・・・ですが・・・」


 急に田中君はまた元気になって、叫んだ。

「よし!材料を探そう!そして、この国で成り上がるんだ!!」



 どうやって探すつもりなんだ?

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