第1話 ここは異世界

(吉岡視点)

 窓から外を見る。

 もちろん、ガラスなんかない。風が通り放題。木の扉みたいなものはついているけど。


 外から見える景色は、日本と全然違う。

 緑の少ない荒野に点々と平屋で石造りの建物が並ぶ。

 それぞれ、煙突から煙が出ている。


 どうやら、ここは本当に異世界のようだ。


 ため息をついてソファに戻る。

「ここ・・本当に異世界なんだな」

 他の3人を見る。

 田中は・・・何か目をキラキラさせて周りを見回している。

「マジか?じゃあスキルとかあるのかな?チートなスキル!」

 こいつ・・・もともとオタクっぽかったからな・・・

「私たち・・無理やり戦わせられるのかしら。平和な日本に暮らしてたのに・・戦うなんて無理でしょう・・?」

 藤島さんは、うつむいている。かなり不安そうだ。

「大丈夫!俺がチートなスキルで戦うから!」

 にやにやと田中が藤島さんに言った。

「まずは経験値上げないとな~。ステータスってどうしたら見れるんだろ・・」

 ぶつぶつと独り言を言い出した。


 エリザベスさんは、ソファに座って木のカップでお茶を飲んでいる。よくあんな苦いお茶を飲めると感心してしまう。


 それにしても、優雅である。

 プラチナブロンドのシルクヘア。透き通った青い瞳。整った顔。

 この世の物とも思えない美人。

 立ち振る舞いもおしとやかなうえに、とても勉強熱心。

 大学でも、多くの男たちが狙っている女性である。


 その女性と一緒にいられるなんて・・それはそれでうれしい。


「ホンと・・ドウシマしょう・・」

 カップに目を落とし、呟くエリザベスさん。


 思わず、言ってしまった。


「大丈夫、僕たちが何とかしますから安心してください」

 エリザベスさんは驚いたように僕の顔を見た。

 そして頬を赤らめ、微笑みながら言ってくれた。


「アリガとゴザイマス。ヨロシクおねがイシマス」


 その笑顔を守るためなら頑張れる。僕はそう思った。

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