第10話 シャルルさんは見た目よりずっとストイックだった

俺はまた普段と同じ朝を迎えた。


〈レイ君、朝だよ起きて!〉

〈・・・もうちょっと寝させて!〉

〈駄目だよ。今日からまた修行再開するんでしょ!ほらっ起きて〉

〈ん、、、クロノおはよう〉

〈おはよう、レイ君。ご飯もうすぐできるからね!〉

〈あっ、ありがとう〉


そんなやりとりをしながらも俺は目を覚ました。

そういえば、昨日はみんなが俺にサプライズしてくれたんだっけ?楽しかったなー…

俺もその時クロノをデートに誘えたし……っていま冷静になって考えてみると俺、めっちゃ恥ずかしいことしてない?

やばい、昨日のことを意識すればするほどどんどん顔に熱が帯びてくるのを感じる。


〈レイ君ー、ご飯できたよ〉

〈おっおう〉


クロノはテーブルにご飯を並べている。

ふー、ばれなくてよかったー。

俺は心の中で安堵しつつ席についた。


〈できたよっ!どうぞめしあがれっ!〉

〈いただきます〉


やっぱり、クロノのご飯はうまいなー。

いつも通りクロノの料理に舌鼓を打っていたら、クロノは突然話し出した。


〈レイ君、今日からする修業についてなんだけどね、今日から、レイ君には魔法を覚えてもらおうと思っているんだ〉

〈分かったよ。それって、クロノが教えてくれるのか?〉

〈いや僕は、【精霊魔法時空】しか使えないから、ホイップとシャルルが代わりに教えてくれるよ。それに、僕はこれから、大精霊会議に行かないといけないし〉

〈そうなのか。ところで大精霊会議って何?〉

〈大精霊会議っていうのは、僕たち大精霊が毎年集まって、裏の大会の会場のこととか、この世界についての情報とかを共有するための会議だよ〉

〈その会議ってどれくらい、やるんだ?〉

〈大体この時の森で200年ぐらいだね。あっでも、レイ君の誕生日には帰ってこれるから、心配しなくていいよ〉

〈そうなんだ〉


気になっているのはそこじゃないんだけどなー……

それでも俺はひとまず安心した。


〈さてご飯も食べ終えたし、僕はそろそろ行くよ。じゃあレイ君も修行頑張ってね!さぼったらだめだよ!!!〉

〈分かってるよ。クロノも気をつけてな〉

〈うん!あとは任せたよ、ホイップ、シャルル〉


〈〈分かりました、分かった〉〉


クロノが突然二人の名前を挙げる。

するといつからそこにいたのかホイップさんとシャルルさんが現れた。


え……ホイップさんとシャルルさん、いつからそこにいたの!?全然気づかなかったんだけど……


〈じゃあ行ってくるね、レイ君〉

〈あっああ!行ってらっしゃい〉


〈【精霊魔法時空】空間転移〉


クロノはにこりと笑った後、何かをつぶやいて消えた。

その場には俺とホイップさんとシャルルさんの3人だけになる。


〈じゃあレイ、今から私とホイップが魔法を教える〉

〈こっこれからよろしくお願いします〉


俺は、緊張して噛んでしまった。

あー恥ずかしい……それに、心が鉛のように重たい。

すると、シャルルさんが俺の肩に手を置いて言った。


〈うん、よろしくだけど、レイ、緊張しすぎ。私たちはもう家族みたいなものなんだから、遠慮しなくていい〉


その言葉で俺の心は、嘘のように軽くなった。


〈分かりました。じゃあ、ホイップさん、シャルルさん、よろしくお願いします!〉


〈うん。よろしく。〉

〈はいっ!よろしくお願いします。〉

・・・



〈じゃあ、まずは魔法について説明するんだけど、ホイップは魔法を撃てる場所の準備をしないといけないから、私が魔法について教えるね〉

〈はいっ!〉

〈魔法っていうのは一言でいうと魔力のイメージ化。例えば、レイは【炎魔法】ファイアーボールって聞いて、どんなものをイメージする?〉

〈えっと、火のかたまりを投げるイメージですかね?〉

〈そう。じゃあそれって、どこから投げる?〉

〈手からだと思います〉

〈そうだね。じゃあ今から、実践してみるからよく見てて〉


「【炎魔法下級】ファイアーボール」


シャルルさんがそのように言うと、シャルルさんの右手に野球ボールぐらいの火の玉が現れた。


〈…こんな感じ。今何が起こったか分かる?〉

〈えっと、シャルルさんの右手に魔力が集まって、それが、突然形を変えたように見えました〉

〈正解。今私は、右手に魔力を集めて、魔法を使った。じゃあ、次も見てて〉


そう言うと、何の前兆もなく突然、シャルルさんの左手にファイアーボールが現れた。


〈何が変わったか分かる?〉

〈シャルルさんは魔法を詠唱してませんでした。〉

〈おしい、正解だけど満点じゃない。まだ、レイはスキル【鑑定】を使えないから分からないかもしれないけど、今、 私は普通の1.5倍魔力を使った〉


いやっ、そんなんだれが分かんねん!

俺は、心の中でシャルルさんにツッコミを入れる。


〈じゃあ詠唱したほうが使う魔力は少なくてすむから、詠唱したほうがいいんですか?〉

〈うんうん、むしろ逆。詠唱したら魔法を打つのが遅れるから弱いし、実戦では使えない〉

〈でも無詠唱だったら、魔力たくさん使うじゃないですか〉

〈それの何がダメなの?私もレイもたくさん魔力あるじゃん〉


あっ、、、確かに!


〈じゃあこれからは、〉

〈そう。全部の魔法を無詠唱で使えるようになるまで修行してもらう〉

〈今日はとりあえず、【炎魔法下級】ファイアーボールを覚えてもらう。大丈夫。時間はある〉

〈そういえば、ホイップさんとシャルルさんはこの森にずっといて、大丈夫なんですか?〉

〈それは心配しなくていい。クロノスタス様が魔力の結界で守ってくれてるから〉

〈あっ、そうなんですね〉

〈うん。じゃあさっき教えた【炎魔法下級】ファイアーボールやってみて〉

〈はいっ!じゃあ、いきます〉


俺は集中して、右手に魔力を集中させる。イメージは玉入れの赤い球を手の上で燃やす感じ。それでいて、俺の手に熱が伝わらないように、手を魔力でコーティングする。


〈【炎魔法下級】ファイアーボール〉


口には出さず頭で魔法をイメージする。

すると、俺の右手の上に、シャルルさんが出したものより一回り大きいソフトボールくらいの大きさのファイアーボールが現れた。

シャルルさんは、目を丸くしてこっちを見ている。


〈・・・驚いた。一発で成功するのもだけど、私のより大きいファイアーボールを作れたことがすごい。レイは魔法の才能がある〉

〈あ、はは、ありがとうございます〉

〈ちなみに、【炎魔法下級】ファイアーボールは魔法の分類的には、【炎魔法下級】っていう分類に入っているよ〉

〈あっ、そうなんですか〉


俺はその瞬間、嫌なものを感じた。

俺の体の全神経がこの先の言葉を聞いてはいけないと警告している気がする。


〈予定が変わった。レイには3年間寝ないで、【炎魔法下級】を覚えてもらう〉


俺は耳を疑った。これは何かの冗談じゃないかとも思った。

〈冗談ですよね?〉

〈私は冗談なんか言わないよ?〉

〈ええええええええーーーー!?〉


それから3年間、俺は寝ないで、【炎魔法下級】を覚えさせられた。

そして、俺は称号とスキルを獲得した。



 ・・・・・・



〈レイ、今日までお疲れ様、明日からは【炎魔法中級】を覚えてもらうから、今日はゆっくり休んで。〉

〈はい、分かりました〉

〈おやすみ、レイ〉

〈シャルルさん、おやすみなさい〉


俺は3年ぶりに眠りについた。



神谷零のステータス


 年齢      2歳


 レベル     1


 称号      転移者、セレの祝福(魔力量は一定量を超えたがなぜか発動しない)、限界突破、無睡眠者アンスリーパー(睡眠しなくても疲れない)


スキル     言語理解(精霊)、無詠唱魔法 


魔法      炎魔法下級

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