思い出の手紙

勝利だギューちゃん

第1話

基本、過去にはこだわらない。

というか、こだわりたくない。


楽しい思い出がないもないからだ。

自己責任化もしれない。


でも、過去は変えられない。

しかし、閉じ込めることは出来る。


過去の物を、近づけなければ、多少は救われる。


なので、何もかも捨てている。

教科書も、文集も、卒アルも・・・


そのつもりだった。

しかし、残ってしまっていた。


当時、好きだった女の子からの手紙。

こう書かれている。


『昨日は、素敵なお花をありがとう。

冗談で言ったんだけど、本当に持ってきてくれて、嬉しかった。』


それだけだ・・・


あっ、思い出した。

この子は、その前日まで入院してたんだ。


そして、久しぶりに登校し、「退院祝いに持ってきて」と言われたんだ。

おバカな僕は、持って行った。


卒業してから、会っていないが、生きているだろうか?


その手紙は、女子高生がよくやるような、たたみ方をしてある。

誰が考えたのか?


しかし、その女の子の顔が、全く思い出せない。

高校時代なので、多少は記憶に残る。


でも、思い出せない。


卒業してすぐに、引っ越しをして連絡が届いたが、それも捨てた。

なので、会えないし、会うつもりもない。


まあ、美人薄命なので、一病息災ではあるが、元気にしていると思う。


「これも、捨てよう」


こうして、過去はまたひとつ、閉じ込めた。


でもなんで、残ってたんだ?

確か、捨てたはずだが・・・


『〇〇くん、捨てさせないよ。

あなたは、私を忘れたくても、私は忘れさせないから』


夜中に手紙が、自ら戻ったことを、僕は知らない。

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思い出の手紙 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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