第2話 悪魔との取引

仕事?こんな所で?

その場にいる全員が思った。


「土地を買いに来たのか?」

別の客が言った。


「いいえ」


「お役所仕事か?」

また別の客だ


「いいえ」

男は空のグラスを眺めた。


店主はウイスキーを手に取ったか男は手を振り断った。


「ここから南の方に用がありまして」


南の方?あそこには農場があるが、だが…


「農場を営むクライアントにお声がかかりまして、私どもの商品を売り込みに行くところです」


「あんた正気か!あそこの農場主は…」

「ああ、やめろ!あそこはの巣窟だ。生きて帰って来た奴はいない」


客だけでなく店主にも言われた。


「悪いことは言わね、諦めて帰んな」


「しかし仕事ですので」


「まさかあんた、あいつらに…」


男はグラスをゆっくりとカウンターに置き、代金を置いた。「店主、釣りはいらない受け取ってくれ」男は店を出た。


店を出た途端、額に何かぶつかった。目の前には少女と幼い男の子が立っていて凄い形相で睨んでいた。


「あんたでしょ、これからあの農場に武器を売りに行くのは」


少女が言いきった、恐らく男の子が石投げたのだろう。


自分としたことか、不意を突かれた、額に当たった。鈍い痛みを感じて額に手を当てると血がにじみ出ていた。


周囲を見るとこの二人意外にも同じ顔をした住人達が近づいてきた。


「出てって!二度と来ないで!」


少女は勇気を振り絞りながら叫んだ。


男はスーツのポケットからハンカチを取り出し、額を抑えながらその場を去り農場に向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る