僕は魚の夢をみる

綿麻きぬ

観賞魚

 僕は今、水槽の中にいる観賞魚を見ている。ヒラヒラした色鮮やかな鰭を靡かせながら泳いでいる魚を見ている。


 僕はそんな魚の今後を考えている。この僕より小さな世界で生きているこのちっぽけな生き物はこれからどうなるのだろうか。


 彼らは僕の気分で殺されることもある。そして僕の気分によって生かされている。


 でも彼らはきっとそんなことは認識していない。そして僕ら人間が「幸せなのか」「不幸とは何か」などを考えている間、彼らは元いた場所を思い出したり考えたりはしていないだろう。


 飼い主は彼らの命を預かっていることを覚えていないといけない。それは飼い主としての責任である。僕はそれをよく分かっている。


 分かっているからこそ、僕は水槽の中にそっと毒を入れる。1滴、2滴、ポチャリポチャリと。波紋は広がり徐々に溶けていく。すると魚は口をパクパクし始めて、苦しみだす。そして沈んでいった。


 そうやって魚を殺す妄想をする。お湯を入れたり、餓死させたり。残酷である。


 そうなる未来が見えるからこそ、僕は生き物を飼わない。僕のエゴで命を奪ってはいけないような気がするから。


 そして僕はそうやって殺される生き物のように抗えない力で死にたい。そんなことを考えている僕は最低だ。


 最低な僕は最低なことを考え、これからも生きていく。

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僕は魚の夢をみる 綿麻きぬ @wataasa_kinu

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