第213話 メインイベント

 そして、今回最大のメインイベント。騎士ワルキューレたちによるモンスター狩りをお披露目する。


 檻や鎖もないのでバリュードは放したまま。逃がさないためにチェルシーとミディアに潜んでもらい、バリュードが逃げないように威嚇してもらっている。


 オレは使節団が観戦する台の下で寝そべり、バリュードが襲ってこないよう威嚇する。


 狩り方は騎士ワルキューレたちに任せてあり、バリュードを闘技場に追いやったら即開始。なので、使節団には二時間くらい観戦席で待ってもらうことになってしまったのは今後の課題だな。


 しかし、バリュードもへこたれない生き物だ。


 オレらが三方から威嚇し、逃げ道を塞いでいるってのに戦意を失ってない。生き延びようとこちらを威嚇してるんだからアッパレである。


 とは言え、心打たれることも、助けてやる気も一切ない。あのバリュードには騎士ワルキューレに狩られてもらう。そのために苦労して捕まえてきたんだからな。


「……あんな大きな狼までいるとは……」


 いろいろモンスター(の死体)を見せてきたが、受け入れやすい姿だからか、その大きさに素直に驚愕できているのだろうよ。


 バリュードのことはゼルに説明させ、解説もお願いしている。オレにはゼルム族の戦いはよくわからんからな。


 弱い敵から狩る、と言う野生の本能が働いたのか、騎士ワルキューレたちを弱いと判断し、そちらに全力を注いでいる。


 チームワークを活かしながらバリュードを翻弄し、攻撃を加えていっている。


 オレから見たらちまちました戦いに見えるが、使節団には白熱する戦いのようで、観覧台のギリギリまできて観戦していた。


 ヤトアたちも隠れて見張っているのでオレものんびり観戦したいが、使節団になにかあればレオノール国として困るのだから油断はできない。バリュードから目を離すことはできないのだ。


 両者の力は均衡しており、三十分くらいのときが流れた。


「そろそろ仕留めるぞ!」


 ん? もしかして均衡を装おってたのか?


 それを証明するかのように騎士ワルキューレの動きが加速され、次々と槍をバリュードに突き刺していった。


 予備の槍も使ってバリュードを串刺しにしていき、ロープを脚を絡めて行動を奪った。


 倒れたバリュードに剣を持った者が斬り裂き、突き刺し、そして、息の根を止めてしまった。


 勝利の雄叫びをすることなく、観戦台の前までくると一列に並び、右の前脚を折り、使節団に一礼した。


「見事である。勇敢に戦った騎士ワルキューレに称賛を!」


 ゼルの言葉に観客としていた集まっていた者らが大歓声を上げた。


 使節団も観客の熱に当てられたようで、子供のようにはしゃいでいる。まあ、満足してもらえたらなによりだ。


 熱が冷めたたら倒したバリュードのところに向かい、使節団にバリュードを触らせた。


「レオガルド様。これは食べられるのですか?」


 いろいろモンスターを食べたせいか、バリュードに忌避はないようで、ミロウド伯爵が尋ねてきた。


「まあ、食えるんじゃないか? ゼル王、どうだった?」


 ゴゴール族が食っていた記憶はあるが、人間が食っていたかまでは記憶にない。どうだったっけ?


「食えるぞ。まあ、おれは食ったことがないので味は知らんがな」


 まあ、基本、ゼルム族は菜食。たまに魚を食うくらい。肉の味を訊かれても答えられんわな。


「そうか。なら、捌いて今日の宴で出してやれ」


 血抜きとかはわからんが、まあ、料理人がなんとかすんだろう。丸投げで申し訳ないがな!


 使節団の連中が解体も見たいと言うので、ゴゴール族の料理人が十人くらいやってきて捌き始めた。


 ゴゴール族は肉のほうが主食だからか、捌くのが早い。一時間もしないで捌いてしまったよ。見事か!


 食べれるところを持って皆が下がったら、騎士ワルキューレに労いの言葉をかけ、褒美は後日ということで解散させた。


「チェルシー。食べていいぞ」


 森から出てきたチェルシーにバリュードの余りを食わせた。オレもミディアも好みじゃないんでな。


「ミディア。狩りにいくぞ」


 ホッとしたら腹が空いた。


 鼻がいいミディアなら簡単に獲物を見つけてくれるだろうからな。


 あとは任せて狩りに出かけた。

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