安定期編
第195話 二つの月
ミドットリー島が見えてきた。
「ラダーレン。あの島に向かってくれ」
他のところで生きてきた生物をいきなり本土に連れていくのは危険だ。まずはミドットリー島で生活させて様子を見るとしよう。
現れたオレたちにミドットリー島に住んでいる者たちが驚いたが、モンスター慣れしてるのですぐに受け入れた。
「レオガルド。ここがレオノールってとこ?」
「その入口だ。まずはここで体を慣らす。危険なものは住んでないから見てくるといい。ただ、海には気をつけろよ。危ないのが結構いるから」
まだマドたちがいるが、その力が及ばない海洋生物がいる。一メートル半くらいのハーピーなど簡単に捕まえてしまうだろう。十二分に気をつけろよな。
「わかったー!」
本当にわかってるのかわからない返事をしてハーピーたちが島の奥へ飛んでいってしまった。不安しかないな……。
「オールダー。新しく国民にしたハーピーだ。少々自由なところはあるが、しばらくミドットリー島に置かしてくれ」
「わかりました。ハーピーとはなにを食べるので?」
「主に魚を食っているようだが、肉も食えるな」
「では、そう急いで食料を追加することもないですか?」
「そうだな。海の魚も食えると言うことだし、運んでくることもないだろう」
ミドットリー島にくるまでにラダーレンが捕まえた魚を食った。喜んでいたから他の魚も食えるはずだ。
「オレもしばらくいる。船がきたらオレが戻ったことをコルモアに伝えてくれ」
そう告げて海へ向かった。
マドたちに呪言を送り、ここまでいいことを告げ、オレの代わりに近海を守っていてくれるロドを引かせてもらった。
ミドにまた会える日を楽しみにしていると伝えてくれ。元気で。
そう広範囲に送ると、マドやラダーレン、サイザルムなどのサメや龍などが集まり、オレの周りを何度か泳いだら仲間たちのあとを追って旅立っていった。
──友よ、元気で!
最後にマドの呪言が届き、いつもの海へ変わった。
……力あるモンスターは環境や空気を変えるものなんだな……。
もういないとわかっいるが、名残惜しくてしばらくそこに止まってしまった。
ミドットリー島に戻ると、すっかり暗くなっており、大きな月と小さな月が輝いていた。
「そう言えは、この世界には月が二個あるんだったな」
一緒に回っているわけではなく、何年かに一回、近づくのだ。
「願わくば幸運の象徴になって欲しいものだ」
そうするためにもレオノール国をよいものとしよう。それがオレの生きる理由なんだからな。
ミドットリー島に上がり、ハーピーたちを探すと木の枝につかまって眠っていた。
「器用だよな」
竜の巣でもサエギリの樹の枝につかまって眠っていた。巣とかは作らないんだろうか?
オレもその下で眠り、太陽が昇ると同時にハーピーたちが起き出した。
「レオガルド、お腹空いた!」
知らない地にきたのに元気なことだ。順応性に高い種族のようだ。
「じゃあ、海にいくか。オレが見張っているから」
ハーピーたちを全員連れて海に出た。
オレはプカプカ海に浮き、ハーピーたちの船(止まり木?)になって狩りを見守った。
魚はオレの存在など意に介さず、海面近くを泳いでハーピーたちに狩られていた。
「海の魚は美味しいね!」
どうやらハーピーは赤身の魚がお好みのようで、一メートルくらいのマグロっぽいものを狙うようになった。
「島にも運んで人間たちにも食わせてやろう」
最初、人間たちは魚はあまり食べなかったが、捌き方、調理法を教えたら食うようになった。そのうち生でも食い始めるかもしれんな。
「ハーピーは狩りが得意なのですな」
「そうだな。ハーピーにはミドットリー島とコルモアを行き来して伝令してもらったり狩りをしてくれると助かるな」
あの体で一メートルもの魚を持ち上げることもできる。三十キロくらいならコルモアとミドットリー島間を運んで飛べるはずだ。
「魚は美味しいし、天敵はいないし最高だよ!」
オレの頭の上ではしゃぐビズ。あーその爪いいな。ちょっと頭をかいてくれ。
ハーピーたちに体を梳いてもらった。あぁぁぁっもっと強く~。
ミドットリー島で二十日くらい生活し、ハーピーたちも人間になれたので、ちょうど入港したゴルティアにハーピーたちを乗せてもらってコルモアに向かった。
オレはさらに体が大きくなってプレアシア号に乗れないので、空を駆けて向かうことにする。
船で半日の距離なので、オレだと一時間もかからない。この距離ならちょくちょくいけるな。
「ご無事でなによりです」
コルモアの港に着くと、すぐにセオルたちが集まって帰りを迎えてくれた。
「ああ。ただいま」
集まってくれた者たちに応えた。
うん。離れてみてわかる故郷のありがたさ。帰る場所があるとは幸せなことだ。
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