第193話 決着

 キケーラもオレに気がついたようだ。霊力が膨れ上がった。


「……強いな……」


 オレを見ても怯む様子もなく、すぐに敵意を向けてきた。あれは強い敵と戦ってきて身についた自信だろう。


 だが、恐れるほどの感じはない。SSランク。ティラノサンダーよりは強いかな? ってくらいだろう。まだオレの脅威ではない。


「長老。隠れていろ。終わったら呼びかけるから」


 頭に乗るビズを下ろし、風を生み出して空へ駆け出した。


 オレが向かってきたことにビクついたが、すぐに威嚇の咆哮を上げてきた。


 弱い生き物ならそれだけで死んでしまうだろう。だが、オレにしたらただ吠えてるだけ。威嚇にもならんわ。


 まずは挨拶代わりに雷を一発。電光石火の如く空を駆けてキケーラに直撃するが、やはり雷耐性があるようで鱗を滑るように流れていき空に流れていった。


 空を飛ぶだけに身についた耐性だろう。進化とは恐ろしいものだ。


 しかし、オレの攻撃は雷だけではない。空を駆けれるように風がメイン。風を操ることに特化してるのだ。


 風を操り空を駆け、キケーラに迫って爪で一撃。


 風はどうした!? なんて言うことなかれ。風と同じくらいオレの爪は凶悪にできている。


 岩くらいなら簡単に斬り裂けるし、鎧竜の鱗ですら余裕で斬り裂ける。キケーラの鱗も斬り裂くことができ、青い血を撒き散らした。


「お前の血は青色かっ!?」


 思わずお前の血は何色だ! みたいに叫んでしまった。


 これまでのモンスターは赤い血だった。緑龍も赤だった。なのに、なんで青い血? 確かに特異種と言ったが、まさか血の色まで特異だったとは思わんかったよ!


 なんて一瞬の隙を生んでしまい、キケーラの尻尾で殴られてしまった。いってー!


 痛みに堪えながら風を纏った──瞬間に大地へと激突。樹々を吹き飛ばしながら転がされた。


「……いてて。生まれて初めての痛みだわ……」


 風を纏ってこれとか、SSランクでも油断したら殺されるな。気をつけろ、オレ!


 痛みを払い、霊力を高める。


「うん! 久しぶりの強敵! 獣の血が騒ぐぜ!」


 前世のオレは穏やかな性格だったので、これはゲルボアル(あ、オレの種族名ね)の血だろう。強敵に会うと血が熱くなるからな。


 風を纏い、空へ駆ける。


 キケーラが二つの口を開けた瞬間に身を捻って回避。今までいたところに白い炎が襲いかかっていた。


 白炎かい。なかなかエゲつない威力のを吐きやがるぜ!


 だが、当たらなければどうと言うことはない。こっちも空を駆ける訓練はしてきた。緑龍を食ったばかりでもあるから三時間は空を駆けてられるぜ!


 回避回避で白炎を避けながらキケーラへ迫り、風の刃を食らわしてやった。


「防御力、それほどでもないな!」


 機動力にパラメーターを振ったのか、八割くらいの力でグッサリと斬れてしまった。


 青い血が空へと吹き出され、痛みか怒りかはわからないが、大絶叫を上げていた。


 治癒力もそんなに高くないようで、流血が止まらない。のたうち回ってさらに血を流していた。


 降下と言うより落下していくキケーラを追い、追いついたら爪でさらに斬り裂き、一回転して後ろ足でレオガルドキック。勢いよく大地に叩きつけてやった。


 オレも大地に着地。倒れている樹に噛みつき、風で枝を斬り落とし、先を尖らせる。


 ──止めだ!


 レオガルドターンをしながらキケーラの胴体に突き刺す。さらに片方の首に噛みついて千切り切ってやった。


 青い血がなんかピリピリする。毒でも混ざってるのか? ペッペッ。


「治癒力はなくても生命力は高いのな」


 片方の首をなくし、胴体に樹を刺したのに、まだ動いている。


「もうお前の負けだ。諦めろ」


 前足を振り上げ、レオガルドスタンプ。胴体を踏み潰してやった。


 それが致命傷となり、動きが段々と小さくなっていき、やがて動かなくなった。


 それで死んだと思うのは浅はか。残った頭も踏み潰す。それでようやく倒したと判断した。


「ハァー。血があれでは肉も毒が流れてるな」


 狩ったら食うが基本だが、食えないものまで食うほど信念にはしてない。素直に諦めます。


「うん。これにてキケーラ退治、終了だな」


 長い息を吐き、疲れたとその場に伏せてしまった。

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