第189話 竜の巣

 四日くらいしてさめサメ鮫シャークの一団がやってきた。


「レオガルド。息災でなによりだ」


「ああ、ミドも元気なようでなによりだ。忘れられてなくてよかったよ」


「海の上の者には長い時だったか。我々には昨日のことに感じられる」


 どうやら地上と海の中では時間の感覚が違うようだ。浦島効果ってヤツか?


「レオガルド。突然ですまぬが、少し力を借りたい。海の中でしか生きられぬ我ではどうしようもないのだ」


「ミドの助けになるなら貸してもいいが、長いこと離れることはできないぞ」


 ついていったら百年が過ぎてましたは困る。オレはレオノール国の守護聖獣であり、ギギと生きるためにいるんだからな。


「レオガルドがいない間、我の眷属に守護させよう。レオガルドほどの存在でなければ近づいてはこぬだろう」


 ミドの横にSSランクはありそうなサメが現れた。


「この者はロド。強き呪言を操る。しばしの間ならレオガルドの代わりとなろう」


 ──我が名はロド。ミドの友たるレオガルドに敬意を。


 ミドより強い声がオレの頭に伝わってきた。確かにこんな強い声を頭の中に通されたら並みのモンスターでは太刀打ちできまい。チェルシーには耐えられんぞ。


「わかった。皆に離れてることを伝えてくる。待っててもらえるか?」


「問題ない。その間、狩りをしてもよいか? いい獲物が集まっている」


「好きにしてもらって構わない。オレは海のものはあまり狩らないからな」


「感謝する」


 さめサメ鮫シャークたちに狩りの許可を与えると、四方に散り出した。


 なにを狩るか見てみたいが、のんびり眺めているわけにもいかないと陸に上がり、セオルに伝え、一応ロドと顔合わせ(?)をさせた。


 ロドの呪言は人間を簡単に殺せると言うので、レオノール国の艦には霊力を込めたオレの毛を持たせて襲わないよう言いつけた。


「レオガルド様。レイギヌスのナイフは置いていくので?」


「ああ。ミドたちが嫌がるんでな」


 オレはもう慣れたが、ミドたちはレイギヌスを嫌がっている。慣れるオレれらが異常なんだろうよ。


「ギギにはなるべく早く帰ると伝えてくれ」


 オレの口から言いたいが、戻ってる時間が惜しい。さっさといってさっさと片付けたほうがいいはずだ。


「必ず帰ってきてください。ギギ様に恨まれるのは嫌ですからね」


「わかっている。なにがあろうと帰ってくる。約束する」


 SSS以上の相手なら尻尾巻いて逃げてくるさ。


「ロド。頼む」


 ──レオガルドの代わりとなろう。


 ミドの下へ向かうと、百メートルの白い龍がいた。こういうのまでいるんかい!?


「我の眷族、ラダーレン。この者の背に乗るといい」


 乗ると言うか、跨がる感じでラダーレンの背に乗らせてもらい、海上へ体を出してくれた。


「ラダーレン。世話になる」


「その者は呪言を返せぬが、レオガルドの声は伝わっている。我はいけぬが、眷族を同行させる。マド」


 と、白いサメが現れた。


「我の流れを組む者だ。まだ若いが賢いが、レオガルドの助けとなろう」


「我が名はマド。よろしく頼む」


 ラダーレンより呪言は強くなく、すんなりと声が届いた。


「ではレオガルドよ、頼む」


「ああ、最善を尽くそう」


 ミドに見送られ、ラダーレンが進み出した。


 ラダーレンの進みは凄まじく、ラダーレンの鱗の隙間に爪を食い込ませないと落ちてしまいそうだ。どんだけ速いんだよ!?


 それでも夜になっても目的地には着かず、太陽が昇った頃、なにか島が見えてきた。


「あそこか?」


 マドに問う。


「いや、あの島を越えた先。我らが竜の巣と呼んでいる陸だ」


 それを証明するかのように竜の群れが飛んでいた。


「竜の巣から竜が外に出ることは滅多にないが、たまに特異な竜が産まれ、我らに襲ってくるときがある。海の中なら負けぬが、その竜は少しの間なら海に潜れ、我らが反撃する前に逃げてしまうのだ」


 ……なんか鳥でそんなのがいたな……?


 しばらくして竜の巣とやらの島──といか陸地が見えてきた。


「レオガルド。我らはこれ以上進めぬ。海の竜がいるのだ」


「わかった。ここからは自力でいこう」


 陸地は見えてるのだからそう距離はない。余裕でいける。


「なにかあれば呪言で知らせてくれ。すぐにくる」


「わかった。なるべく早く狩ってくる」


 ラダーレンの背から跳び出し、陸地に向かって空を駆け出した。 

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