第187話 巫女学校
冬の中頃から雪が降らなくなった。
「この大陸の天候はよくわからんな」
なかなかどうして予想するのも難しく、毎年毎年違った冬がやってくる。いったいどうなってることやら……。
「雪も解けたし、ミナレアに移ってみるか」
大雪を予想して、レニーラをゴゴール族の地で過ごさせようとしたが、雪が少ないとなるとやることは多い。なにがどう多いかまでかはわからんが、細々と動いている。邪魔にはならんだろうが、邪魔するわけにもいかない。オレが言ってミナレアへと移ることにした。
ブランボラルへ向かい、カルオンに発つことを告げ、神殿長たるシャルタ(ゴゴール族)に用意をお願いした。
用意を考えてレイテラ村を発ったのは三日後。二日かけてゆっくり移動し、五日目に着いたときはすべてが調っていた。
レニーラに休むかと問うたが? 休まなくともいいと言うので挨拶だけしてブランボラルを発った。
「こちらも雪がないってことは、広範囲で雪が少ないようだ」
もしかして、フガクが近くにいて雪を持ってっているのか?
「レオガルド様! 甲冑蟲です!」
「またか。雪が少ないと蟲が出るのか?」
形はダンゴムシだが、サイズは自動車くらいあり、死骸や樹の皮を食ったりするオレらにしたら害蟲だ。
ただ、こいつを見ると無性にじゃれたくなるのは獣の本能だろうか? 人としての理性が揺さぶられるぜ。
「オレの見えないところにふっ飛ばせ」
今のオレはレニーラや橇を牽いている状態だ。本能に負けたら大惨事。オレの悪魔(本能)を静めている間に遠くへやってくれ……。
そんなプチハプニングがあるのが町から町の移動。もっと穏やかになれば流通もよくなるんだがな。
七日ほどでミナレアに到着。銃士隊に先触れとして走らせたので、凄い数のミナレアの者たちに迎えられた。
「ルゼ公爵。しばらく世話になる」
「はい。ゆっくりとお過ごしください」
ルゼと再会を交わしたらレニーラを紹介し、城っぽくなってきている館へ場所を移した。
レニーラのことはルゼに任せてオレは神殿に向かう。
「レダ。世話になる」
「ようこそお出でくださいました。巫女一同を代表して歓迎いたし」
巫女長のレダ(ゼルム族)を筆頭に、巫女たちが迎えてくれた。ってか、なんか巫女の数が増えてないか?
「明らかに若いのがいるな?」
「はい。巫女見習いとして行儀作法を教えております」
巫女見習い?
それらし~いことはギギに教えて、それらし~く教えさせたが、まさか見習い見習い制度を生み出すとは。あ、ザザが教えたのか?
「あまり巫女を増やしたら男たちに恨まれないか?」
「いえ、見習いはあくまでも見習い。礼儀作法を教えるための学舎として巫女学校を始めました」
「そうか。お前たち。よく学びよく競え、友や家族を大事にする強き女となれ」
ゼルム族に男女尊卑はないが、それでも男社会なのに違いはなく、女は家を守り子を育てるのが当たり前みたいなものがある。
時代と状況を考えたらそれも仕方がないことだが、巫女ばかり増やしたら出生率が下がる。まだ個人の自由が尊重され、独身がよしとされる社会でもない。今は産めよ増やせよ地に満ちよな時代なのだ。
「ヤトア。ロズルにミナレアを案内してやれ」
「わかった。ロズル、まずはブブル酒で乾杯しよう」
ライバルがもう友か。羨ましいよ。
「巫女たち。毛繕いを頼む」
それは巫女の勤め。巫女の存在意義である。
……まあ、オレの毛繕いが存在意義ってのも哀れなものだがな……。
オレが神格化され、レオノール国を纏めるために必要なこと。毛繕いされるのはオレの勤めである。あー気持ちいい~。
「レオガルド様」
のんびり毛繕いされてたら神殿長で霊司教のザザが帰ってきた。
「あちらはいいのか?」
「はい。ルゼ公爵様とレニーラ様とお話が弾み出しましたから帰ってきました」
「そうか。疲れてないなら最近のことを教えてくれ」
ミナレアを離れて一年、いや、二年か? フジョーやなんだってゆっくりできなかった。冬はまだ続く。その間のことをゆっくり聞かせてもらおう。
「畏まりました。では、町の様子から──」
毛繕いをされながらザザの語りに耳を傾けた。
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