第184話 ミダンの花園
この広い大森林。無駄に捜したところで見つけるだなんて不可能だ。まずは原点復帰。バルバドラの民が住んでいたと言う集落へと向かった。
準モンスター複数を単独で倒せるだけに走るのも速く持久力もある。一日五十キロは余裕で走れたよ。
「ここがお前らの故郷か」
いや、元故郷か。バリュードによって滅ぼされたようだからな。
「……はい。去年まではたくさんの同胞が暮らしてました……」
集落の規模から言って、少なくとも二百人は暮らしていたんだろう。レオノール国に併合される前のミナレアと同じくらい、って感じだな。
「バリュードはいきなり襲ってきたのか? 襲ってくるのを察知して逃げたのか?」
それで大きく違ってくる。
「襲ってくると察知して逃げました。よくあることなので」
だろうな。ここも周辺は岩や渓谷に囲まれてはいるが、モンスターともなればそんなこと気にしないで襲ってくるものだ。バルバドラの民だってわかっているから警戒し、襲われる前に逃げたのだろう。
「なら、逃げる道、集合する場所、隠れられる場所などは前もって決めていたか?」
「はい。すべてを捜しました」
「バリュードも賢い。群れで狩りをする。となれば、獲物の逃げる先、隠れる場所を把握しているかもしれない。お前の妹はそれに気がついて裏をかいたのではないか?」
ロズルの話では賢い妹だと言っていた。食われたのでなければ知恵を使って逃げているはず。
「この集落に隠れる場所はあるか?」
「……はい。食料を貯めておく洞穴があります」
その場所へと案内してもらったが、オレの体では入れない渓谷にあった。
「食料がなければしばらく誰かが隠れていたはずだ」
小型のバリュードでもこの渓谷には入っていけない。まず咄嗟に隠れるには最適なはずだ。
「ありませんでした。あと、何人かいた形跡がありました」
「となれば、バリュードがいなくなってから逃げたんだろう」
おそらくフジョーが現れたかしてここから立ち去ったのだろう。まったく、行動範囲の広いヤツらだよ。あいつらも国でも創ろうとしたのか?
「なにかあればブランボルに逃げることは決めてたか?」
「そう言う者もいましたが、バリュードから逃げて落ち着いたら戻ってこれると考える者がほとんどでした」
「お前の妹もか?」
「はい。他の民のところに逃げても貧しい暮らしになりますから」
どの種族も同じか。まあ、同じ民同士で生きてきたんだから余所者なんかいれたがらないわな。
「ブランボル間は捜し尽くしたのならお前の妹は別方向に逃げた可能性が高いな。希望を持って逃げるか、一か八かか、バリュードならこないと踏んだ場所か、遠回りになっても安全な場所を通るか、お前の妹はどれを選ぶ性格だ?」
「……バリュードならこないと踏んだ場所だと思います……」
「そこに心当たりはあるか?」
「はい。ミダンの花園だと思います」
ミダンの花園? そんなところがあるのか?
「どんなところだ?」
「モンスターが近寄らない花が咲くところです」
また物騒なところに逃げたな。
「ゴゴール族は近寄っても大丈夫なのか?」
「我々には花は害となりませんが、ロロスと言う小さな蟲がいて、死肉に集まってきます。エサがなければ生きた獣でも襲いかかると言われてます」
小さな蟲? 蟻か?
「では、そこにいってみるか」
「ですが、レオガルド様が危険に!」
「対策はある。いくぞ」
フジョーより最悪なのはいないだろうし、花と言うなら花粉か毒でモンスターを殺すのだろう。なら、風を纏えば防ぐことはできる。
小さな蟲は雷で追い払えばいい。他にもやりようはある。SSSランクの獣は伊達じゃないことを見せてやるよ。
集落からロズルの脚で二日。女の脚では六日くらいか。かなり離れた場所にミダンの花園とやらがあった。
確かに花園と言うだけに色鮮やかな花々が咲いていた。ただし、これはフジョーと同じ生命力を吸うタイプの花だってのが直感でわかった。並みモンスターではこの甘い香りに誘われて花園の中に引き込まれるな……。
「ロズル。ここでお前らが食えるものはあるのか?」
「ミドズと言う小さな獣がいますので、それを狩って食っていれば飢えはしないかと思います」
なら、生存の可能性はあるな。
「少し刈るか。ロズル。大きく離れていろ」
ロズルを下がらさせ、風の刃で花園を蹂躙していった。
もちろん、花粉や毒を吸わないよう風を纏わせることを忘れない。そして、四肢から雷を大地に流して蟲を焼き殺した。
花園を約三キロ進むと、小さな湖に出た。
湖には白い大蛇がいて、現れたオレに威嚇している。
ここの主的存在なんだろうが、サイズも強さもAランクがいいところ。雑魚でしかない。
だが、かなり濃い毒を持ってそうな感じがする。毛が震えているぜ。
「まあ、それでもオレの敵ではないがな」
ゆっくりと湖に入り、白い大蛇が襲ってきた瞬間に雷を全開で放った。
雷耐性はまるでなく、煙を吹いて水面に倒れてしまった。
白い大蛇を咥えて陸に上がり、花園の外まで戻った。
「ロズル。これで楽になったはずだ。捜してこい」
オレは白い大蛇を食って待つことにするんでな
「はい。いってきます」
ロズルを見送り、白い大蛇を食い始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます