第18話 レイギヌスの使い方

 レイギヌスの嫌な感じが近づいてくるのがわかった。


 たぶん、なにか封じる箱にでも入れてたのだろう。突然、嫌な感じがした。


「持ってきました」


 レミアが持ってきた箱には漢字のような文字がいっぱい書かれている。封じるほどのものだってことが嫌でもわかるぜ……。


「ヤバいものがあるものだ」


 まあ、嫌な感じはするが、堪えられないほどではない。触れなければ問題なさそうだし。


「誰か、この嫌な感じはわかるか?」


 皆に問うが、誰もわからないようだ。オレだけに感じるものなのか?


「レイギヌスの弾はオレのような獣を殺すために作られたものなんだな?」


「はい。わたしたちがいた大陸にも巨獣はいましたので」


 へ~。この大陸以外にもモンスターっているんだ。まさにモンスターワールドだな。


「箱を開けてくれ」


「は、はい。でも大丈夫なんですか? それ、あなたを殺すものですよ?」


「生き物を殺すものなどいくらでもある。人間だって銃で死ぬだろう」


 嫌な感じを出してくれるだけ警戒しやすい。と言うか、武器としては欠点じゃないか? モンスターだって嫌なものから逃げるし、近づいたりしないぞ。


 箱が開けられ、さらに嫌な感じがした。


「前より強力だな。箱から出すと威力が弱まるのか?」


 以前は、銃口を向けられてから嫌な感じがした。なのに、箱に入ってても感じたぞ。


「はい。そのための呪法管理人です」


 オレに霊力を感じる力はないのでレミアがどのくらい霊力があるかわからない。が、これだけの嫌な感じを出せるんだから霊力は高いのだろう。


「これには光の霊力が籠められているんだな?」


 中身は十発。見ているのも嫌になるものである。


「はい。毎日籠めています。封呪も万全ではないので」


 ゲーム的思考なら光は闇に強いとかだが、これはモンスター全般に向けて作られている。ってことは属性に関係なく、モンスターが持っているなにかを滅するってこと、か?


「リドリル。一人、連れてこい。これを持たせる」


「……ど、どうしてもか……?」


 あんな状態でも仲間だと思っているのか。なかなか情に厚い男だこと。


「どうしてもだ。連れてこい」


 ここは命令しておく。希望は見せたくないからな。


「逃げてもいいが、その先にお前らの未来はないぞ」


 そのまま滅びると言うなら好きにしたらいい。縁がなかったと諦めるだけだ。


「……わかった……」


 肩を落として仲間のところへと向かった。


「レオガルド様、なにか考えがあるんですか?」


 オレを理解してくれるギギが清らかな目をオレに向けてくる。


「ちょっとした確認だ。まあ、死ぬかもしれんがな」


 オレにも結果はわからない。だから恨まれ役はオレだけでいいし、ギギに向けさせるわけにはいかないからな。


 しばらくしてベイガー族の一人を連れてきた。


「レミア。一発出してそいつに持たせろ。リドリル。逃がすなよ」


 連れてきた者もレイギヌスの弾から出る嫌なものを感じれるようで、ギーギーと嫌がっている。


 レイギヌスの弾をつかんだレミアは、他の者に手伝ってもらい、レイギヌスの弾を連れてきた者の手に持たせた。


 その瞬間、連れてきた者から黒い煙が吹き出した。


「呪素ですって!?」


 どうやら黒い煙は呪素と言うらしい。


 見た目的には体に悪そうだが、そんな嫌な感じはしない。それどころかなんかいい匂いがする。


 二分ほど黒い煙が吹き出したら、連れてきた者の体に異変が起きた。


 体がボコボコと蠢き、関節がいろんな方向に曲がったりしている。


 ……この世界の細胞、どうなってんだ……?


 少しずつボコボコがなくり、人らしい姿になっていき、そして、十五、六歳くらいの女となりました。


「遺伝子を変える呪いとかほんと意味わからんな」


 それが代々受け継がれて増殖する。霊力の奥深さを垣間見た気分だよ。


「レイギヌスの弾から嫌な感じは消えたな」


 落ちたレイギヌスの弾を爪でトントンと叩いてみる。


 なんともないところをみると、金属自体にはオレを害する力はないのか。強度的には鉄より硬い感じかな?


 潰れたレイギヌスの弾を肉球で触れてみても体に異常はない。金属と霊力が合わさってモンスターを殺せる武器となる、のかな?


「なにはともあれ、レイギヌスならベイガー族の呪いを排除して元の体に戻るってことだが、問題はレイギヌスの弾に限りがあるってことか」


 そうポンポン作れるものとは思えないし、呪法管理人がそう簡単になれるとも思えない。全ベイガー族を元に戻すことは難しいってことだ。


「……お、おぉぉおぉぉぉぉっ!」


 と、リドリルが号泣する。


 無理はないと思うので号泣させておき、レミアにレイギヌスの弾があと何発あるか尋ねた。


「管理できてるのは二百数発はあります」


「セオル。前に鹵獲した数は?」


「四十発くらいです」


 多いのか少ないのか判断に苦しむところだな。


「霊力を籠めればレイギヌスの弾となるのか?」


 そこ重要だよ。


「なりますが、わたしの力では一発籠めるのに二日から三日はかかります」


 二日や三日でオレを殺せるくらいの霊力が籠められるんだからレミアの霊力は凄いんだろうよ。


「十発だけ残して、残りはベイガー族に使え。レミアは霊力を無理しない程度に籠めろ。セオル。レミアを優遇してやれ。リドリル、いつまで泣いている。仲間を元に戻したいのならさっさと連れてこい」


 蹲って泣くリドリルのケツを前足で蹴飛ばしてやる。


「は、はい!」


 転びながらも仲間の元へと駆けていった。


「やはり、レオガルド様はレオガルド様ですね」


 ギギがオレの首に顔を埋めてくる。褒めるならもっと具体的に褒めてくれ。まあ、その思いだけでオレは嬉しいがな。


「セオル。秋までにはコルモアの町を復旧させろ」


「わかりました」


 なにはともあれコルモアの町を侵略できてなによりだ。ハァ~。

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