第47話

情報収集が得意だと言ったジゼルが町で掻き集めてきてくれた情報によると犯行時刻は夜中から夜明け前に絞れた。

それに加えて犯行は三、四日おきに行われている。

一般人がここまで調べられるなら警備隊も調査出来るでしょ。

そう思ったがあのやる気のなさを見てしまったら犯人が捕まらないのも納得出来てしまう。


「それにしてもあの量の虫をどこで捕まえているんだ」

「近く森だと思いますよ。あそこは奥に進むと虫が多いと聞きますから」


泊まっている宿屋近くの酒場。

ジェドとジゼルと私の三人で集まって会議を開いていた。


「犯人の犯行が三、四日に一度なのも大量の虫を集めているからでしょうね」

「犯人は暇人なのか…?」


ジェドの言葉に苦笑いをする。

おそらく犯人は時間に余裕がある人だと思うけど、その条件に合う人を町の中から探すとなると時間がかかってしまう。それにその条件が本当に正しいのかは分からない。

どうしたものかと三人で首を捻る。


「犯人は虫を探しに行ってるから…あ、門番さんに話を聞いたら何か分かるかもしれませんよ」

「確かに頻繁に出入りしている人がいないかと聞けば良いな」


ジゼルの言葉にジェドが頷いた。

確かに同じ人が出入りしていないか聞くのは良いと思いますけど、アーバンは人の出入りがそれなりにあるところだ。門番が覚えているかどうかは分からない。

それに犯人が変装をしていたら気づかれない可能性だって高いのだ。


「とりあえず明日は門番さんに話を聞いた後で森に行ってみませんか?もしかしたら犯人がいるかもしれませんし」

「それは良い考えだな」

「えっ…」


行きたくないのですけど、という雰囲気を出す。

もし犯人が森の中に居たとしてもその周りには大量の虫が発生しているという事だ。

絶対に近寄れない!

顔を青褪めさせると二人は揃って心配の声を出した。


「エル?大丈夫か?」

「エルさ…エル、平気?顔色が悪いですよ?」


心配してもらっているところ悪いけど大した理由じゃないのであまり大声を出さないで欲しい。

私は駄目だけどジゼルは大丈夫なの?

虫で失神していた彼女が森の中に入って大量の虫を見れるのか心配になる。


「エル、森に行きたくないの?」

「む、虫が多いところは避けたいわ…」


言われるまで気がついていなかったのかジゼルは顔を青褪めて「確かに…」と声を漏らした。

これで二人脱落だ。となると頼る事が出来るのはジェドだけになる。

彼の方を見ると不思議そうに私達を見下ろしていた。


「ジェド、悪いのですけど……その、森の方を見てきてもらっても良いですか?」

「構わないが俺が戻るまで二人はどうする?待機しているか?」

「ま、町の方で調査をしています」

「ジェドが働いているのに私達が怠けているわけにはいきませんから」


ジゼルの返答に乗っかるように言葉を返すとジェドは大きく頷いて「分かった。任せておけ」と言った。

正直迷惑な人だと思っていたけど今は救世主のように見えてしまう私はかなり現金な女だと思う。


「よし、絶対に犯人を捕まえるぞという意味を込めて乾杯しよう」

「そうですね」


乾杯、という声と共にグラスをぶつけた。

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