桜と不思議な男の子

勝利だギューちゃん

第1話

私は、桜。

桜の妖精。


春になると、ピンク色に染まる。


私は、人間が嫌いだ。

私たちが、花を咲かせると、大勢の人間が詰めかける。


そして、飲んで騒ぐ。

ゴミを持ち帰らない人が、殆ど。


場所の取り合いで、喧嘩も絶えない。


私たちは、あなたたちを咲かせるために咲いているんではない。

なので、もう我慢の限界が来てた。


でも、昨年は静かだった。

誰も来なかった。


来てもベンチに座って静かに見ている。

さすがに気になった。


男の子だ。

多分・・・

人間の性別は、わからないが・・・


でも、私の言葉は伝わらない。


為にしに、桜の花びらを、舞わせてみた。

「もし、気が付いたらここまで来て」

そういう、意味を込めた。


すると、その子が近づいてきて、私のいる桜の木に手を当てる。


(呼んだ?)

(あなた、私の言葉がわかるの?)

(うん。ここまで来てと言ったよね)


なんなんだろう?


(ねえ、あなたは人間だよね?)

(そうだよ・・・ただ、普通ではない)

(というと?)

(こうしていると、わかるんだ・・・植物の声が・・・)


不思議な人だ


(ねえ、あなたは男性なの?女性なの?)

(男だよ。まだ未成年だけどね。君は女性みたいだね)

(うん。女の子だよ。桜の妖精のね)


私の姿は見えるのかな?


(ねえ、あなたは私が見える?)

(見えない・・・でも、想像は付く)

(想像?)


そういうと、彼は何かを取り出した。

あれは・・・

そう・・・スケッチブックだ。


何度か見たことがある。


彼は何かを描いている。


(こんな感じだね)


そこには、かわいい女の子が描かれていた。

その女の子は、多少の違いはあるが、間違いなく私だ、


(うん。こんな感じ、でも、どうしてわかったの?)

(声から、想像した。イメージを膨らませて)


この人は、本当に人間なのか?

私は、逆に怖くなった。


でも、人の少なさに疑問を感じていた私は、彼に尋ねた。


(コロナという、ウィルスが猛威をふるっていてね。不要不急の外出は禁止されているんだ)

(あなたはいいの?)

(買い出しはしないと行けないからね。その途中だよ)

(そうなんだ)


初めて人間に興味を持った。


こういう人がいるのなら、しばらくは見てやってみいいかな。


500年ほどは、待ってみよう。

人の一生に比べたら、短いものだ。


(ありがとうね。桜の妖精さん)

(こちらこそ、優しい人間さん)

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桜と不思議な男の子 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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