第10話:第2章⑥その女性は
「あなた、どうして邪魔をするの?」
たんこぶを生やした威風堂々な腕組の女性が説教してきた。
「邪魔……するつもりではなかったのですが……」
正座をしながら首をかしげてみた。
「邪魔するつもりが無かったとしても、実際に邪魔されたのよ。足を引っ掛けられたのよ。こけたのよ」
「だから、それは謝ったじゃないですか」
「謝って済む問題じゃない」
小学校の学級会を思い出した。
「ごめんなさーい! 煮るなり焼くなり好きにしてくださーい!」
横で同じく正座しているメフィスは小学生のように大泣きしていた。言っている内容も小学生が漫画で影響したようなことだが、こいつが言うと笑えない。
「本当に煮てもいいんだな?」
ギロリと鷹のようにメフィスを睨む女性。鷹の目のミホークといったところか、と思っている僕はまだ余裕が有るようだ。
横のメフィスは泣きながらダミ声で「やっぱり煮るのはやめてくださいー」と嘆願していた。こいつは余裕はなさそうだ。
それにしても、この優等生はどうしてメフィスを襲ったんだ?そもそも、ズーッと本に封印されていたメフィスをどうして知っているんだ?
僕は思考した。そして、僕の思考の外から、「焼くのもイヤー」とダミ声が聞こえてきた。――お前ら、本当は仲良しだろ?
「なあ、君、質問があるんだが」
「君ではない。風斗よ。嘉神風斗。よろしく」
足にへばりつく元悪魔を意に返さず僕の質問に騎士のごとく立派な風貌で答える風斗は同性からモテそうだ。
というか、なにをしているんだ元悪魔よ。
「風斗……さん。どうしてその子を狙うのですか?」
風斗の足元のひっつきむしみたいなものを見ながら言った。
「ああ、理由を聞きたいのね。それはね、この子が悪魔だからよ」
……え?
どうしてそれを?
何者?
「あら、驚いたようね。ふふ、まるで鳩が……まあいいわ」
豆鉄砲をくらったよう、な。
「ふふ、なぜ知っているの?という顔をしているわね」
なぜ簡単なことわざを知らないのか。
「教えてあげてもいいわよ。そのことについて」
別のことが気になって内容が入ってこない。
「あなたなら見せても大丈夫ね、これ」
風斗はたくさんある手提げかばんの1つを探っていた。
てか、多っ!
「……手提げ多くない?」
「そうか? 9つ目が要るかなと思っていたのだが」
8つも持っているのか。
「どうしてそんなに?」
「ん? 種類別に入れたらすぐに取り出せるだろ? ……あれ? こっちのカバンだっけ?」
すぐに取り出せてないないですよー。
風斗は黒いかばんから白いかばんに探り直した。というか、腕いっぱいにこんなに手提げかばんをぶら下げていることにどうして僕は気にしなかった。それだけ、ジェットコースターのように色々と驚くことがあったということだろう。
「何を探しているんだ?」
「んー、ちょっと待って。あれー? こっちかな?」
3袋目に突入。もう威厳なんて無くなっていた。
「まだかよ」
「あったあった。これよこれ」
カップ麺を茹ですぎたように伸びてしまった緊張感でゆるーく見ている自分がいる。
「それは……本?」
「そうよ。そして、開けてみると」
風斗の本からオーロラのような光が出てきた。これはあの時と同じ?
――
……何も出てこなかった。
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